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京大に進学してノーベル賞を獲りたい? 島のラグビー部が目指す花園制覇と難関大合格、 32歳監督の挑戦 

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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posted2020/12/26 17:01

京大に進学してノーベル賞を獲りたい? 島のラグビー部が目指す花園制覇と難関大合格、 32歳監督の挑戦<Number Web> photograph by Yu Takagi

2019年1月から監督に就任した田中春助監督。フッカーとして同校の花園初出場にも貢献している(2020年春撮影)

京大に進学してノーベル賞を獲りたい?

 ラグビーがいつまでも好きでいて欲しい気持ちの一方で、他に目指すべきもの、好きなことが見つかればそれも歓迎する。他分野を突き詰めるのも素晴らしいという考え方だ。

「今年は京大志望で将来はノーベル賞を獲りたいという部員もいます。“やってみよう”の精神は絶対摘みたくないんです。昨年は書道部と兼部する選手もいましたよ」

 だからこそ、普段の生活もラグビーと勉強のみに彩られたものではない。島とはいえ住宅、住民も多い「田舎すぎない」環境で、地域住民との交流も大切にしてきた。「新入生はまずダンスの練習からです」と笑うように、4月末には尾道市のお祭りで踊りながら海岸通りを歩き、年間通して島内の清掃活動にも積極的に参加している。

 今年は新型コロナ禍によりそのようなイベントはすべて中止となってしまったが、緊急事態宣言中でも清掃活動を続けるラグビー部のメンバーを見た島民から「グラウンドで練習をやったらいいのに」と声をかけられたこともあった。また、花園出場を決めた際は、近隣の店舗からピザや飲料などが差し入れが実施され、後援会の関係者は「コロナで集めにくいだろうからと言って、逆に頑張ってくれる企業さんもいらっしゃって感謝の気持ちでいっぱいです」と感慨深く話した。

2つ勝てば京都成章と再戦も

 27日に開幕する花園で2つ勝てば、昨年大会で14対32で敗れたシード校の京都成章高校とぶつかる。スクラムにこだわった昨年のチームは、相手よりもFW総体重が90キロ近く軽かったにも関わらず押し切り、ペナルティを奪った場面ではBKも一緒になって歓喜した。今年は試合後の結果でも歓喜を分かち合いたいと考えている。

 田中監督が将来的に目指すのは、花園の頂点と「お金を払ってでも来たいと思ってもらえるチーム」だという。特待生は数名いても学業特待生が基本で、スポーツ特待生はその選考に漏れたもともと成績優秀だった者のみだ。多くの部員が公立に比べれば多い学費を支払って、この向島でさまざまなものに本気で打ち込んでいる。

 さらには「尾道高校に来たら、在学中も卒業後もいろんなことが体験できると思って欲しいんです」と、現在や将来の視野を広げるためにさまざまな講演会に参加もしている。

 全国から小さな島に若者が集い、島民に応援されながら学びを得て成長し、多種多様な夢に向かって羽ばたいていく。そんな理想を目指し、尾道高校ラグビー部は進化を続けている。

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