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石川直宏が語る国立決勝で勝つための法則 04年、戸田光洋への伝言と原博実の「ドトールおごるから」
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byToshiya Kondo
posted2021/01/03 11:02
2004年ナビスコカップ、PK戦の末、FC東京が初タイトルを獲得。歓喜の瞬間、GK土肥洋一の元へ駆け寄った
直訴した交代、ボードには…背番号13?
嫌な予感は的中する。後半が始まって間もなく右足が、ぴきん。バックスタンド側でプレーしていたため、セットプレーの際に逆サイドの戸田光洋に伝えた。
「俺の足、つってるんで、ベンチに“交代を準備しておいてくれ”って伝えてください」
戸田の返事は「わかった」。しかし、0-0のまま進んだ後半39分、最後の交代選手として第4の審判がピッチサイドから示したのは「背番号13・戸田光洋」だった。これには石川も驚いた。
「延長戦も見えていたので、さすがに120分は走り切れねえぞと。早く交代させてくれと思いながらプレーしていました(笑)。ところが、交代するのは戸田さん。えっ!? って」
試合後に、戸田が石川に明かした裏事情はこうだ。
「実はベンチにナオの足のことは伝えなかったんだ。だって、ナオが交代するほうが、チームにとってマイナスになると思ったから。俺も足をつっていたから、俺が先に交代したいって言ったんだよ」
被シュート27本でも「守り切れる」
石川は、覚悟を決めた。
「走れる・走れない、じゃない。走るしかない。僕の足がつっていることがバレたら、相手はきっと僕のところを狙ってくる。だから平気なフリをして、走り続ける。自分が本来のパフォーマンスを見せられたかというと、全然そんなことはありません。チームとしても、27本のシュートを打たれました。でも、不思議と守り切れる雰囲気を感じていたんです」
石川は120分を走り切った。そしてPK戦の5人目、加地亮のシュートがゴールネットを揺らした瞬間、殊勲のGK土肥洋一に向かって“最後のダッシュ”開始。
「つった足は、カチカチになっていたんですけどね。もう、これは行くしかないだろって。全力で走りました(笑)」