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クラスターが発生したら、世間は僕たちを許さない…東大医学部アメフト部が苦悩の末にたどり着いた一戦
text by
齋藤裕(Number編集部)Yu Saito
photograph byYu Saito
posted2020/12/20 17:01
今年度の主将となった八木。高校まではハンドボール部に所属していた
自分は6年生、ビビる必要はないと気づいた
「最初は相手が強いんじゃないかと思っていましたが、実際戦ってみて目の前の相手より自分のほうが強いんだと感じました。よく考えたら、自分は6年生で相手は最上級生でも4年生ですから、ビビる必要はなかったんです」(前村)
今まで見えない敵だった存在がそこに現れ、対策が見えた。ハーフタイムには相手のパント処理(蹴って相手陣方向にボールを移動させること)が甘いことをチームで共有。後半第3クォーターには4年のDB中村幸大が蹴り出したパントを身体で受け止めキャッチし、そのままタッチダウン。これがチームにとって今季唯一のタッチダウンとなった。スコアは10-19、スコーピオンズにとって今季、最初で最後の試合を黒星で終えた。
これが最後のアメフトの試合となり、来年からは研修医として働く前村は試合が実現した感謝を述べつつ、こう前を向く。
「試合はやっぱり楽しかったです。若い選手もこの場に立てて、実戦を経験できたのが良かったと思います」
試合後、卒業する6年生も含め全員で集まり、写真撮影が始まる。マスクを取り、白い歯がこぼれる主将と選手たちの表情には安堵感と達成感がにじみ出ていた。
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