語ろう! 2020年へBACK NUMBER
新しい地図・香取慎吾×パラアーチェリー 福知山線脱線事故に巻き込まれた岡崎愛子が目指した「東京」
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/12/24 06:00
半日以上、床で絵を描き続けるという香取(左)のエピソードを聞いた岡崎は「アーチェリーに向いてますよ」と笑った
柔軟なルールは悩みの種になることも
香取 お話を聞いていると、道具に関するルールは結構柔軟なんですね。
岡崎 弓も装具もわりと自由にカスタマイズできます。その中で自分に合ったバランスをどう見つけていくかも重要です。
香取 色々と変えられるっていうのは良いことなのか、変えられすぎて困るのか。
ADVERTISEMENT
岡崎 するどい! 両方ですね。ルールでこれって決めてくれた方が楽かもしれなくて、色々変えすぎたことが原因でスランプに陥ることもあります。あそこを変えて良くなったから、じゃあもう少しだけと思った途端に悪くなって、戻れなくなったり。
香取 何が良いのかわからなくなっちゃうってことですよね、怖いな。
岡崎 私は迷いたくないのでなるべく変えないようにしています(笑)。今のこの弓と自分の状態を極めるというか。それに私の場合、重いと体が倒れちゃうのでとにかく軽さ重視。だから弓を選択する余地があまりなくて、それがかえって良いのかもしれないです。でも、アーチェリーって外でやるので気候にすごく影響されるんですよ。私のように弓が軽いと風の影響を受けやすくなるから、トップアスリートは重い弓を使っている人が多いですね。
香取 えっ! そもそも屋外でやるんですか! 知らなかった。
岡崎 インドアの別競技もあるんですけど、パラリンピックは屋外です。
香取 風が強い日とかでも?
岡崎 はい。アーチェリーって一見楽そうに見えますが、実際は冬で雨で風があっても試合はあります。しかもパラの予選や国内大会だと1人6射を12セット、計72射打つので、3時間近くかかるんです。
香取 72射!? ハードだなあ……一発に集中して打つっていうイメージしかなかった。
岡崎 テレビで放映される決勝トーナメントは15射と少ないので、すぐ終わる競技というイメージですよね(笑)。
介助者がいないと続けられない
香取 競技人口はどれくらいですか。
岡崎 パラアーチェリーだと国内では250人くらいですね。でも、私が所属している四肢麻痺のW1クラスには、女子は私1人しかいません。なかなか競技を続けるのが難しくて。
香取 続ける難しさはどこなんでしょう。
岡崎 介助者がいないと続けられないんです。1人では弓も組み立てられないし、矢を的から抜くのも難しい。人を確保するというのが一番だと思います。
香取 そうすると、介助者をされているお母さんが昔アーチェリーをやっていたのはすごく大きいですね。
岡崎 はい。でも、母がやってなくてもやってたと思います。他のパラ競技も探したんですよ。その中で、自分でもできそうなのがアーチェリーと射撃だった。両方体験して、より体を動かせる方をということでアーチェリーを選びました。