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大ケガからの復活 チャンピオンズカップ制覇の戸崎圭太が語る“マル秘ノート”を見返さなかったワケ
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2020/12/11 17:00
4度目の対決でついに王者クリソベリルに先着したチュウワウィザード
「クリソベリルには勝てるかも、でも…」
実際にゲートが開くと、見事にクリソベリルを目の前に置く位置で競馬を進める事が出来た。
「一番良いポジションを取れました。道中の手応えも良かったけど、ただ、タイプ的に自分からグイグイとハミをとっていくタイプではありません。だから3コーナー手前からある程度、うながしていきました。これは想定の範囲内でした」
クリソベリルに離されずについていく、「レースプランとしてはベストな展開になりました」と言う戸崎騎手は、このすぐ後、考えていた以上の形になったと続けた。
「4コーナーで追い出しに入り『クリソベリルがどのくらい伸びるか?』と思って見ていると、意外に手応えが良くありませんでした。それでスンナリと抜き去る事が出来ました」
先頭に立ち、ディフェンディングチャンピオンを負かせると思ったが、イコール勝利を確信するには至らなかった。
「手応え的にクリソベリルには勝てるかも、とは思ったけど、GIで強敵が沢山いたので、ゴールするまで勝利を確信する事はありませんでした」
落馬で開放骨折、じん帯、神経の損傷を負って
最後まで気は抜けなかったが、終わってみれば2着ゴールドドリームには2馬身半もの差をつけた。堂々と、そしてゆうゆうと先頭でゴールイン。チュウワウィザードはこれがJRAのGI初勝利、戸崎騎手にとっても一昨年、エポカドーロで制した皐月賞以来となるGI優勝となった。
「久しぶりですからね。改めて嬉しいです」
昨年の11月4日、浦和競馬場で行われたJBC競走。レディスクラシックでモンペルデュに騎乗した戸崎騎手は「自分が早目に引かなかったせいで挟まれて落馬した」(本人)。開放骨折に加えじん帯や神経も損傷する大怪我を負った。
手術後も患部の熱がなかなかひかず、眠れない日々が続いた。握力が全くなくなった。移植した骨がうまくつかず、再手術を施した。結局、戦列復帰したのは今年の5月23日。落馬してから実に200日の時間を要した。