第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
城西大学は三本柱の往路に自信アリ。神奈川大学は4年計画を実らせたい。
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箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021
photograph byAsami Enomoto/Yuki Suenaga
posted2020/12/10 11:01
城西大を牽引する主将の菊地(写真左)。神奈川大の主将・北﨑は前回2区を走った。
神奈川大学
第97回箱根駅伝予選会:4位
第96回箱根駅伝(前回大会):総合16位
11年連続、52回目
粘り強い選手を育てるための、種まきと収穫。
文=生島淳
大後栄治監督が、神奈川大学の指導に当たるようになったのは1989年のことである。
「日本体育大学の大学院を卒業してすぐ、神奈川大のコーチに就任しました。私は大学時代、監督が不在だった日体大の主務をやっていまして、練習メニューの計画、実行を管理していたんです」
すると、神奈川大はメキメキと力をつけ、1997年に箱根駅伝で初優勝し、1998年には連覇を達成する。大後監督は振り返る。
「当時はハーフマラソンの距離に特化して強化を進めることが、そのまま箱根駅伝の強化につながりました。ウチの選手はトラックのスピードはなかったけれど、粘り強く走ることができたんです」
指導歴は30年を超えたが、いまも変わらぬ神奈川大の持ち味を大後監督はこう話す。
「箱根駅伝とは不思議な大会で、スクールカラーを映す大会でもあるんです。青山学院大学は都会的な明るさがあり、早稲田大学は各界に人材を輩出し、マラソンでは瀬古利彦さんや大迫傑選手のように日本を代表するランナーを育てています。そのなかで神奈川大の持ち味といえば、泥臭い練習に耐えて力をつけ、粘って、粘って、粘り抜く。それが神奈川大のカラーだと思います」
1年生の存在が悩みを解消する!?
これまでじっくりと育てた選手がたすきをつないできたが、2021年は例年とは違う楽しみがある。1年生の存在だ。
箱根駅伝予選会では、チーム内3位から5位までを高橋銀河、宇津野篤、佐々木亮輔の1年生3人が占めたのである。大後監督は新人の登場を喜び、大きく育てたいと考えている。
「1年生にとっては初めてのハーフマラソンでしたから、ここまで走るとは想像していませんでした。高橋、宇津野、佐々木以外にもいいメンバーがいます。今季はコロナ禍で練習計画も例年通りいかず、『1年生には多くを期待しちゃいけないな』と思っていましたが、彼ら自身の意欲が高い」
このところ、神奈川大にとっての悩みの種は、往路の主要区間で勝負できる人材が限られていたことだが、1年生がその悩みを解消するかもしれない。
「高校時代に実績のある選手は、優勝を狙える上位校に進む傾向があります。ただし、それで諦めていては戦えませんから、ウチとしては2018年に卒業した鈴木健吾(現・富士通)のように、上級生になってから対等に走れる選手を育てていくしかないわけです」
鈴木は2016年(第92回大会)の箱根駅伝で、2年生で2区を走り区間14位。しかし、1年後には3分以上もタイムを縮めて区間賞を獲得した。