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坂本花織がNHK杯圧勝 振付師ブノワ・リショー独占取材「4回転へのステップの1つにすぎない」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byKoki Nagahama -ISU/ Getty Images
posted2020/12/01 17:01
総合229.51ポイントと今季のGPシリーズ4戦の中で女子の最高得点でNHK杯を制した坂本花織
「可能な限り高いポイントを得るために、コンビネーションジャンプを後半に持っていったらどうかと勧め、彼女は同意してくれました。カオリが持っている技術で、内容をマキシマムにするのは大事なことですが、彼女はいつもきちんと耳を傾けて100%の努力をする。チームの指示を信頼してくれたことで、ここでの結果が出せたと思います」
そしてさらに、こう続けた。
「スピンとステップシークエンスでちょっと点を取りこぼしている。これは逆にポジティブなこと。完璧に滑ったら、80ポイント近くまで上げられる可能性があるということですから」
パンデミックの中で、このSPの振付は完全にオンラインで行われたという。
「このパンデミックでは多くのことが困難になったけれど、中にはポジティブなこともありました。私たちはこれまで以上に(オンラインで)こまめに連絡を取り合っています。パンデミック以前よりも、頻繁なくらいです。そのことが、とても役に立っていると思います」
フリーの『マトリックス』で今季女子最高点
翌日のフリーで、坂本は昨シーズンの『マトリックス』に再挑戦した。持ち越しにした理由は昨シーズン、ついに一度もこのプログラムをノーミスで滑り切ることができなかったためだという。
だがこの日に見せた『マトリックス』は、圧巻だった。
2アクセル、3フリップ+3トウループ、3ルッツ、3サルコウ。スピードにのったまま、1つ1つのジャンプを着実に決めていった。スケーティングがよく滑り、スパイラルの姿勢でジャッジの前を横切った時はボードにギリギリだった。最後の3ループまですべてを完璧に降り、スピン、ステップでもレベル4を獲得した。フリー153.91、総合229.51ともに、(変則的な開催になったためISU非公式ではあるものの)今季のGPシリーズ4戦の中で女子の最高得点である。
不調だった昨シーズンと何が違うのかと聞かれると、坂本はこう答えた。
「自粛で1カ月半滑れなかった分、いつもできていない体作りを1カ月半しっかりやることができたので」
滅多に褒めることはないというリショー氏も、このプログラムをこう評した。
「『マトリックス』は昨シーズンよりも、成熟しましたね。カオリはロックダウンの最中、この振付の鍵となるエレメンツをフレッシュに保つため、よく練習していました。そしてここでは、強さと自信を持って演じたのです」