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エディ・ジョーンズは好調フランスをどう料理する? 若きレ・ブルーの弱点は“退場癖”と協会との軋轢か
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byAFP/AFLO
posted2020/12/01 17:00
24歳SHデュポン(左)ら軸に華麗なラグビーを見せるフランス代表。盤石なイングランドを倒し、“秋の王者”に輝けるか
試合を壊す“一発退場”もフランスあるある
好調を保つ今年のフランスだが、唯一敗れた試合は中断前のシックスネーションズ第4節スコットランド戦だ(17-28)。前半37分にPRモハメド・ハオスが相手選手にパンチを見舞い一発退場となり、その後は14人での戦いを強いられた。
フランス代表の一発退場と言えば、昨年のワールドカップ準々決勝ウェールズ戦が記憶に新しい。LOセバスチャン・バアマイナが相手選手に肘打ちを喰らわせ、後半9分にレッドカード。この試合を19-20で落としたフランスはベスト4入りを逃して日本を去っている。感情を爆発させる国民性を反映するチームカラーもいいが、たった1人がコントロールを失い、チーム全員が痛い目を見ることもあるのだ。
”3試合ルール”と盤石なイングランド
さらに気にかかるのは、フランス代表を縛り付ける独特の事情だ。松島幸太郎も所属するフランス1部リーグ「TOP14」が、この秋の代表戦出場を3試合までとする規約を代表チームと結ばせた。協会と世界有数の待遇を誇るTOP14クラブとの軋轢が目立つフランスは、秋の全6試合の代表戦に独自の制約を設けたのだ。
相手チームのコロナ感染を喜ぶ者など誰もいないだろうが、オータムネーションズカップ初戦のフィジー戦の中止はこの試合数制限ルールに少なからず好影響を与えていた。とはいえ、フランスはこの“3試合ルール”のため、主力選手を欠く布陣でイングランドとの大一番に挑まなければならない。
対するイングランドは、前述したフランスに敗れて以降は7連勝中と不動の強さを発揮している。激しいディフェンス、近距離での肉弾戦と、効率的なキックを伝統的なチームカラーとするイングランドは、正にフランスラグビーとは対極に位置する。
エディーが植え付けた「新しいもの」
しかも、稀代の名将エディー・ジョーンズHC就任以来、バックスに多くの才能が光るのが現在のイングランド代表の特徴でもある
「本来のイングランドの強みを変える必要は全くありません。私の仕事は、このベースに新しいものを付け加えていくことです」
15年に就任したジョーンズHCは、就任記者会見での宣言を、今でも貫き続ける。
華麗な戦いを信条に感情を表現するフランスと、とにかく勝つことだけにこだわるイングランド。“欧州のラグビーファンたちに、興奮と喜びを取り戻す”と銘打って立ち上げられたオータムネーションズカップの決勝戦は、日本時間12月6日午後11時に聖地・トゥイッケナムでキックオフを迎える。