「テコンドーサッカー」からの成長

　86年大会を取材したパン・ソクスンは近年の韓国サッカーの意識の変化をこう分析する。

「メキシコ大会に出場していなければ、今の韓国代表の成長はなかったかもしれません。今ではボルトンのイ・チョンヨン、モナコのパク・チュヨン、セルティックのキ・ソンヨンなど若手の欧州プレーヤーがたくさんいますが、それは時代の流れで活発なサッカー交流によって視野が広まり、経験も豊かになったからです」

　24年前のホ・ジョンムとマラドーナの1枚の写真――。それは実に多くのことを語ってくれていた。アルゼンチンにとっては「テコンドーサッカー」でしかなかったが、韓国にとっては世界との差を知るきっかけとなった貴重な試合だった。事実、その後韓国は7大会連続でワールドカップに出場し、再びマラドーナ率いるアルゼンチンと雌雄を決することになった。

　苦手意識も恐れもない。因縁や復讐心も存在しない。選手たちは新たな決意と野望を胸に、南アフリカの地を踏んだはずだ。そして、そんな新しい韓国代表の勇姿を見届けたいと、国民も強く願っている。

アルゼンチンにこそ敗れたものの、パク・チュヨンのゴールなどでグループリーグを突破した韓国代表　©︎AFLO

【前編から読む】マラドーナに「テコンドー」と揶揄された韓国サッカー 86年メキシコW杯で生まれた因縁