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“史上最強”の韓国を打ち崩したマラドーナ 32年ぶりのW杯で味わった世界との差「あいつは止められない」
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byGetty Images
posted2020/11/28 11:02
韓国の厳しいマークに苦しみながらも3アシストを記録したマラドーナ。別格の力を見せつけ、W杯制覇まで駆け上がった
「マラドーナよりメッシ」
一方、86年大会をほとんど知らないイ・グノにとって歴代の韓国代表はどのように見えているのだろうか。
「僕が思いを寄せる韓国代表と言えば、02年韓日ワールドカップでベスト4を成し遂げた先輩たちなんです。だから今でも代表で一緒にプレーしているアン・ジョンファン先輩やキム・ナミル先輩が、僕にとってのスターです」
だからこそ、世界の強豪とも対等に戦える自信があったという。
「本大会でアルゼンチンと対戦すると決まったときは、『あぁ、よかった』と思ったんです。ほかのグループにも強豪がたくさんいますが、その中でもアルゼンチンとならいい試合ができるんじゃないのかなって。アルゼンチンは南米予選で苦戦して、4位で本大会出場を決めていますからね。そこには何かが原因となって、簡単に崩れてしまう部分があると思うんです」
イ・グノ世代にとって、もはやアルゼンチンもマラドーナも、特別な存在ではないのかもしれない。
「世間ではマラドーナがクローズアップされていますが、今のアルゼンチンと言えば僕はむしろメッシの印象が強いですよね。でも、そんな相手のことよりも、まずは自分のことが大切です」
落選したイ・グノ「下の世代には凄みを感じる」
南アフリカに向かう23人に避ばれることに意欲を燃やしていたイ・グノだったが、今季Jリーグでの不調を引きずり、結局は最終メンバーから外れた。その代わりに今年2月の東アジア選手権の日本戦でゴールを決めた21歳の新星FWイ・スンヨルや成長著しい大分トリニータの20歳キム・ボギョンらがメンバー入りしているが、それだけを見ても韓国代表内の競争がどれだけ激しいのかがよくわかる。
それはイ・グノが語っていた次の一言に集約されているとも言える。
「僕より下の世代の勢いには凄味を感じます。彼らの突き上げは本当にすごいんですよ。先輩にも遠慮することなく、自信を持ってプレーしますからね。彼らはどんな相手も恐れていません」
02年大会のベスト4という輝かしい栄光を目の当たりにした世代は、世界の強豪に屈することはないと確信している。