審判だけが知っているBACK NUMBER
<私が裁いた名勝負>井上選手は荒々しかった。気力が充満していた。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
posted2020/12/01 07:00
棟田利幸さん
語り継がれる名勝負をその演者のひとり、審判が振り返る。彼しか知らない新たな景色が見えてくる。
2001年 全日本柔道選手権決勝
井上康生 対 篠原信一
4月29日/日本武道館/井上の判定勝ち(審判:棟田利幸)
無差別で争う全日本選手権の'01年決勝は、4連覇を狙う篠原(左)にシドニー五輪金で勢いづく井上が2年連続3度目の挑戦。序盤から攻撃を仕掛ける挑戦者に対し、守勢に回った王者は技を出せない。終盤の大内刈りなど攻め続けた井上はついに篠原を下し、以後3連覇を果たす。
◇
これは世界で一番強い選手を決める決勝戦なんだ。あの試合の前、私はそう考えていました。