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長谷部誠36歳、“サッカーは30歳までの競技”説を覆す 指揮官が「ベストのプロ」と絶賛の頭脳と肉体 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2020/11/28 11:00

長谷部誠36歳、“サッカーは30歳までの競技”説を覆す 指揮官が「ベストのプロ」と絶賛の頭脳と肉体<Number Web> photograph by Getty Images

会見でも堪能に言語を駆使する長谷部誠。ヒュッター監督からの視線には厚い信頼を感じる

「彼については長く語ることができるよ。これまでトレーニングをしてきた選手のなかでベストのプロだ。それは、彼の年齢とプロフェッショナルな姿勢に関係してくるね。1つひとつのプレーの素晴らしさ、打開力、テクニック、予測能力、視野の広さ。頭の回転が他の多くのFWよりも速いから、スピードで勝る相手FWより早くボールに到達することができるんだ」

「マコトは筋肉系の負傷がまれだ」

 フランクフルトの試合を観戦していると、まさにそうしたシーンを数多く目にできる。体の向きとポジショニングを変えながら試合の流れを読み、次のプレー選択を予測し、相手との距離を調整していく。動き直しが非常に少ないので、1つひとつの動きがとても滑らかなのだ。無駄がない。老練な武道家のような身のこなし。

 そして、長くプロ生活を積み重ねてきたことで、コンディション調整能力も高い。

 ヒュッター監督は「マコトは筋肉系の負傷がまれだ。いつでもトップコンディションを保っている。健康的な食事をとり、いつも早く控室にきている。プレーしないときでも、彼のプロ根性は素晴らしい」

「試合翌日、自分が石のようになったみたいに」

 少し前、「フィジカル的な面で年を取ったなぁと思うことは?」という質問に対して、長谷部は「それは思いますよ。90分間試合に出たら、次の日には自分が石のようになったみたいに感じることもありますから。休息の時間が必要で、若いとき以上に治療にも時間をかけなきゃダメですね」と答えているが、だからこそ自分の体に関する感覚は繊細で、いつでも最大限のケアをして備えている。

 ベテラン選手にパフォーマンスのムラが少ないのは、やはり、そうした普段の心構えがしっかりできているからだろう。

 正しいことを、正しくする。

 当たり前のことに思われるが、若い頃は派手なことに興味があるし、経験したくもなる。そんなときプロとはどうあるべきなのか戒めることができるベテランの存在は、チームの、そしてクラブの価値やアイデンティティを確かなものにする。ベテランがいるだけで空気が変わるのだから。

 チームというものは、共通の目標に向けて様々な要素が有機的に絡み合い、補い合い、互いの力を引き出し合うことで躍動する。チームが円滑に機能するために潤滑油の役割を担うベテラン選手のプレーは、目立たないかもしれないが極めて貢献度が高い。

 そうした、いぶし銀の活躍にも注目して試合を見てみると、サッカーというスポーツをさらに奥深く楽しむことができるはずだ。

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