各クラブが、ハイプレスに対する対策を講じるようになったことが要因の1つだろう。自陣でプレスを受けても慌てずにパスの出口を作り、逆に相手守備の薄いところへボールを運べばチャンスになると考える。無理にパスをつながず、中盤や前線に浮き球でパスをつなげることができたら、相手が守備に戻る前に攻撃を仕掛けられる。

　若くて生きのいい選手ばかりを揃えて、不用意に前からプレスをかけ続けることは逆に自分たちを苦しめることになる。

　もちろん、攻守の構造を整えて、プレスに行くべきとき、待つべきとき、自陣で守備を固めるべきときを整理できているチームもあるが、刻一刻と状況が変わるサッカーの試合において、試合の流れを読み、瞬時に最適な決断をし、狙いが外れたときの次善策も準備しながらプレーすることは簡単ではない。だからこそ、そこでやるべきプレーを理解して、体現できるベテラン選手が求められているというわけだ。

開幕戦の雑誌で語っていた自身の変化

　今季、フランクフルトのホーム開幕戦のスタジアムマガジンには長谷部のインタビュー記事が載っていた。そこで彼は、自身の変化について次のように答えている。

「20代半ばまでは、あまり考えていませんでした。ピッチに立ってプレーがしたいという思いだけだったので。あるときから、常に戦術や規律のことを考えるようになったんです。いまはアディ（ヒュッター監督）が僕らをどうトレーニングしているか観察していますし、なぜ、その練習が必要なのか理解しようとしています。ただプレーするだけではなくて、サッカーを理解したいのです」

　ベテラン選手は、経験豊富であることが最大の利点として挙げられるが、年数を重ねた選手なら誰でもいいというわけではない。

　いつ、どこで、なぜ、どのようにプレーすべきなのかを正しく判断し、ピッチ上の変化を敏感に察し、速やかに最適な判断を下せる選手でなければならない。若手選手と比べて圧倒的に素早く脳内処理し、適切だからこそ、チームにとって必要な戦力となるわけだ。

　フランクフルトを率いるヒュッター監督は以前、長谷部について次のように絶賛していた。

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