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アドマイヤラクティの死から6年 メルボルンCで崩れ落ちた優駿を忘れない…今年もまた同レースで悲劇が 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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photograph bySatoshi Hiramatsu

posted2020/11/06 17:00

アドマイヤラクティの死から6年 メルボルンCで崩れ落ちた優駿を忘れない…今年もまた同レースで悲劇が<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

メルボルンCでのアドマイヤラクティ。死後、同馬は火葬され、遺灰は豪州の功労馬繋養施設であるリビングレジェンズ内の霊園に埋葬された

砂時計の砂が落ち切るように崩れ落ちた

 しかしその直後、事態は急展開をみせる。担当する古味裕之調教厩務員が曳きながら馬房に戻そうと歩かせていると、アドマイヤラクティが突然走り出した。必死に止めようとする古味調教厩務員を引きずるようにして走ったアドマイヤラクティは、ラチにぶつかる直前でやっと静止。その時点で後ろ脚がブルブルと震えていたため、当初予定していたクーリングダウンを中止。そのまま馬房に戻すとその瞬間、砂時計の砂が落ち切るように後肢から崩れ落ちた。

 梅田調教師は言った。

「馬房に着いてから倒れたのは、まるで『他の馬や人に迷惑をかけないように……』と考えていたのでは?と思えるタイミングでした」

主のいない馬房に“Good morning our mate”

 心臓麻痺。

 ほんの少し前に異国で念願のGIホースになったばかりなのに、その命の火は唐突に消えてしまった。

 日本からの遠征馬であるアドマイヤラクティは、検疫厩舎も兼ねたウェルビー競馬場に、他の外国からの遠征馬と共に入っていたのだが、この翌日から他馬の陣営は毎朝、主のいなくなった馬房に向けて“Good morning our mate”と声をかけてから仕事をしたと言う。

 それから6年。今年も悲劇が起きてしまった。もしかしたら今回も同じように他の厩舎のスタッフが声をかけているかもしれない。それはそれで心温まる話ではあるが、出来る事ならこのような悲劇が起きないにこした事はない。

 競馬には怪我や故障が付き物であり、なかなか避けて通れないのは海外でも日本でも同じだ。JRAは毎週末レースを行っているが、少しでも悲劇が起きない事を願いたい。ちなみに今週末は東京競馬場でアルゼンチン共和国杯(GII)が行われる。13年にアドマイヤラクティが2着に好走したレースである。

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