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柔道・村尾三四郎が東京五輪代表落選の逆境で97キロにパワーアップ! 「ただシンプルに強くなる」極意 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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posted2020/11/09 11:00

柔道・村尾三四郎が東京五輪代表落選の逆境で97キロにパワーアップ! 「ただシンプルに強くなる」極意<Number Web> photograph by AFLO

柔道講道館杯男子90kg級決勝での村尾三四郎。東京五輪代表の座を逃し、悔しい思いから這い上がっての優勝だった

90、91キロだった体重を97、98キロまで

「ケンカ四つでは今まで、釣り手を上から持つことができなかったが、今回は上から持っての攻撃や、技の連続のパターンを出すことができた」

 村尾は胸を張って大会を振り返った。組み手で優位に立って圧力をかける。だから技をどんどん出していける。力強く前に出るから迫力がある。そんな印象を随所に見せていた村尾だが、試合後には実際にフィジカル面で一歩前進していたことを明かした。

「コロナの半年間くらいは体を大きくすることをテーマとしてトレーニングした」(村尾)と言い、もともと普段は90、91キロだった体重を97、98キロまで増量。

「今までは自分の普段のベスト体重が何キロか正解がわからずに試合に臨んでいたが、今回は自分の中で探りながら減量や調整をした。今回の試合をやりながら(以前より自分が)一回り大きくなっていると感じた」と充実感を漂わせた。

大野将平はほかの人と違った考えを持っている

 考え方も変えた。昨年の講道館杯で初優勝したときは前述のとおり、「オリンピックで優勝したい」と話していたが、今回は違った。

 連覇達成後のメディア対応で東京五輪の3年後にある24年パリ五輪について聞かれると、「パリ五輪に関しては全然意識していないですね」と言い、「大会がどうこうというよりも、自分自身の成長や、強くなることを頭に置いている」と強調した。

 影響を受けているとして名前を挙げた選手がいる。柔道家としての生きざまを極めようとまい進する73キロ級の大野将平だ。村尾は「大野選手はほかの人と違った考えを持っている。柔道の技に対してはもちろんだが、それ以上に、柔道そのものに対する考え方や自分との向き合い方がすごい」と感嘆しながら述べた。

 それにしても、講道館杯での村尾の柔道は迫力と切れ味が素晴らしかった。男子日本代表の井上康生監督は村尾について「体の大きさもそうだし、実力も成長している。今回は非常に安定している戦いでの優勝だった。24年に向けて楽しみなホープだ」と高く評価する。

 身長180センチ。長いリーチを生かした組み手に磨きをかけて、得意の足技の威力を増している20歳。ピンチを逆手に取るバイタリティーを持つ村尾の成長が、柔道ニッポンの未来を照らしていく。

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