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永里優季「お兄ちゃんが“代表の頃、まるで別人だった”と」 なでしこ辞退後に言われたこと
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2020/11/05 11:01
はやぶさイレブンでの入団会見に立ち会った妹・亜紗乃(左)と兄・源気。その兄からは意外な言葉をかけられたという
周りの声や評価が一切気にならなくなった
――男子サッカーチームでプレーするにあたって、「心身ともにいけるかなという状態になった」とおっしゃっていました。「心」の部分でいうと、どういう状態になってきたんですか?
「周りの声や評価が一切気にならなくなったのが大きいです。自分が大事にしている価値や軸を中心に動いていけるようになったという自信が付いてきたんです。それもあって今回、アクションを起こそうとしたとき、ネガティブなイメージがまったく湧かなかった。だから、決断できたのかなって思います」
――周りの評価が気にならなくなったことも、アメリカで暮らすようになった影響が大きいんですか?
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「アメリカに行ったのもそうだし、代表から離れたのもかなり大きかったと思います。あれが大きく人生を変えたなって」
代表から離れて「解放感が凄かったんです」
――16年3月のリオ五輪予選終了後、高倉麻子新監督のチームにも招集されましたが、16年7月のスウェーデン戦を最後に辞退されていますよね。
「最後のキャンプに参加したとき、新しく生まれ変わろうとしているチームに自分は必要なのかなって感じてしまったんですよね。目標を見いだせない時期でしたし、そういう状態で代表に参加していても申し訳ないので、いったんクラブに集中させてください、と伝えました」
――代表から離れて何が変わったんですか?
「解放感が凄かったんです。やっぱり代表に行くとどうしても、結果、結果、結果。とにかく結果を出さないといけないというプレッシャーが凄くて。それまでの10年間、それが当たり前だと思いながらやってきて、それがなくなったとき、何も背負わなくていいんだっていうことに気づき始めて。自分の人生なんだから、自分が大事にしていることを価値にして生きていくことのほうがよっぽど大切なんだということに気づき始めて」
――代表を自ら降りたことと、アメリカに行ったこと、その辺りから、考え方、生き方が変わっていったと。
「だから、今のような生き方、スタンスを代表でもできていたら良かったなっていうのは思います。現に今のほうがパフォーマンスも上がっているわけだから。これをこのまま出せたら良かったなって」