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「那須川天心には勝たれへんやろ」アラフォー裕樹の引退試合! 全てはあの“不良漫画”の世界から始まった
posted2020/10/31 17:02
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Susumu Nagao
かつてこれだけ引退が伸び伸びになったファイターがいただろうか。格闘技の神様がいるとしたら、彼の幕引きを邪魔をしているのではないかと勘繰ってしまう。
11月1日、RISE大阪大会で“神童”那須川天心を相手に引退試合を迎える裕樹は、当初は去年引退する予定だった。
しかし、長年ホームリングとしているRISEが初めて世界規模のトーナメントを開くことになり、前言を撤回した。“宿敵”チャンヒョン・リー(韓国)との再戦をどうしても実現させたかったのだ。対戦を希望する選手とのマッチメークをたぐり寄せ、実現させる。そういう力を裕樹は持っている。
明けて2020年、本来ならば6月に予定されていたRISEの横浜大会で那須川との引退試合が組まれていた。以前から那須川との一戦を希望していただけに、裕樹にとっては最高のラストマッチになるはずだった。
しかし新型コロナウイルスの影響で、大会そのものが中止になってしまう。結局、VS那須川は裕樹が現在活動の拠点とする関西で行なわれることになった。
『ビー・バップ・ハイスクール』の世界の中で
もうすぐ38歳。格闘技をやり始めたきっかけがふるっている。福岡で裕樹が通っていた高校は不良漫画の名作『ビー・バップ・ハイスクール』のモデルになったような学校だったので、「護身のために始めた」というのだ。
それから20年余り、ファイトスタイルは“博多の悪童”と呼ばれていた新人時代から不変。ワンツーとローキックという昭和のキックボクシングの教科書のような闘い方を身につけている。とりわけローキックの破壊力は強烈で、対戦相手は来ることがわかっていても効かされてしまうという、文字通りの“必殺技”として定着している。
また裕樹が闘ってきた階級は多岐に渡り、スーパーフェザー級(-60kg)、ライト級(-63kg)、スーパーライト級(-65kg)、スーパーウェルター級(-70kg)で闘ってきた。なぜそんなに階級を変更したかといえば、デビュー当初は魔裟斗が全盛期でスーパーウェルター級に強豪たちが集結していたからだ。
スポットライトを浴びたいと思えば、この階級で闘うことが手っとり早かった。その後、階級を下げたのは60kg台でもチャンスを増えてきたことに加え、自分の適正体重を模索していたからにほかならない。