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駅伝強豪校の「“囲う”師弟関係」が変わる 高校記録ランナー石田洸介が大迫キャンプに参加した“本当の価値”

posted2020/10/29 17:02

 
駅伝強豪校の「“囲う”師弟関係」が変わる 高校記録ランナー石田洸介が大迫キャンプに参加した“本当の価値”<Number Web> photograph by Shota Matsumoto

群馬・東京農大二高3年の石田洸介と陸上部顧問の城戸口直樹。撮影は石田の所属クラスの教室にて

text by

和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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photograph by

Shota Matsumoto

「世界を目指したい」

 18歳、石田洸介の志は明確だ。男子マラソン日本記録保持者の大迫傑が主催した少数精鋭の短期キャンプ“Sugar Elite short Camp”に参加したのも必然の流れだったのかもしれない。

 この夏、5000mの高校記録保持者でもある石田は、大迫や鎧坂哲哉、大学生のトップアスリートとともに汗を流した。その時間は、群馬・東農大二高の3年生にとってかけがえないものだったという。

 高校生の参加者が石田1人だけだったのは、高い参加基準(高校生の場合、5000m14分未満)が設けられていたからだ。だが、駅伝強豪校に所属する選手にとって8月は駅伝シーズンに向けて走り込みを行う時期でもあり、実際問題として、参加基準記録を突破していても、チームを離れることはできないという事情もあっただろう。

「外部の考えを入れたがらない指導者も多いかもですが…」

 実際に、石田が頭を悩ませたのもその点だった。Sugar Eliteのキャンプへの応募要項が発表されると、“行きたい!”と胸を躍らせたが、その一方で「チームに所属している以上は、駅伝という目標があり、チームメイトと別の方向を向くわけにはいかないのではないか……」と思い悩んだ。日程がチームの2次合宿と重なっていたからだ。

 顧問の城戸口直樹は、そんな石田の思いを汲み取り、自分のほうから「参加してはどうか」と提案したという。

「石田自身が“世界を見たい”“日本のトップを走り続けたい”と思う以上、私もそこに目を向けていかなければいけません。そこで、大迫傑という世界を見てきている人間と一緒に練習できる機会があるならば、“参加させてみよう”って、単純にそう思いました。

 外部の考えを入れたがらない指導者も高校の陸上界には多いかもしれませんが、私は、石田が参加することで最終的にはチームに還元されるものがあるとも思いました。それに、私自身も学びたいですし」

 大迫からも城戸口のほうに石田参加の打診もあったというが、城戸口やチームメイトの後押しがあって、石田は心置きなくキャンプに参加することができた。

【次ページ】 エース不在の間に大きな成長

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