Number Web MoreBACK NUMBER
【中日 ドラフト1位】「慶應大に落ちたらプロに」中京大中京・高橋宏斗のゴージャスすぎる“進路選択”を決めた試合
posted2020/10/26 18:10
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
果たしてこれを「挫折」と言っていいのか。本当にうちひしがれている人が、怒ってしまうのではないか。高橋宏斗の進路選択は、それほどまでにゴージャスだったことは間違いない。
スタートは10月6日だった。「慶応大への進学を目指します」。18歳の少年はそう公言していた。高校野球界では名門中の名門、中京大中京のエースにして、ストレートの最速154キロを誇る、世代ナンバーワン投手の評価を得ていた。新型コロナ禍により、出場が決まっていた春の選抜は中止になったが、昨年秋の明治神宮大会を制し、優勝候補の筆頭に挙げられていた。夏の愛知県独自大会、続く甲子園交流試合も勝ちきり、思い描いていた形とは違ったが、ずっと宣言していた通りに「無敗のまま高校野球を終わる」を28連勝で達成した。
「不合格」の知らせが球界に駆け巡った
そもそも慶応を目指したのも、兄の伶介さんが慶応に進んだことが大きかった。同校から慶応に進んだ先輩も多く、高橋は神宮にあこがれて環境情報学部のAO入試を受けた。ところが、慶応野球部は全国の学力が伴う秀でた高校球児に勧誘の声はかけるもののスポーツ推薦の枠があるわけではない。実力が抜きんでていても、兄が卒業生であっても忖度は一切なし。高橋も承知の上で受験したのではあるが、6日に届いた「不合格」の知らせは中京大中京だけでなく全国の高校野球関係者に衝撃を与えた。その情報が球界を駆け巡った6日の午後は神宮球場で大学野球が行われており、多くのスカウトマンが視察中だった。
「どうなる?」「どうする?」
ざわついたのも無理はない。高橋の進路選択は慶応進学が最優先。次点がプロ入りだった。つまり、慶応に合格してしまえばプロ側は4年後を待つしかない。ところが、不合格となれば他大学を目指すのか、プロ入りかでドラフト戦略がまったく変わってくる。まず慶応。でなければドラフト1位。冒頭でゴージャスだと書いたのは、どちらに転んでも誰もがうらやむ進路だからである。