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「一言もJを目指すとは言っていない」いわきFC 震災と台風被害を乗り越えての目的地とは
posted2020/10/23 11:00
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph by
Yasuo Kawabata
最後のシュートがバーを越えていったとき、さすがにスタンドがどよめいた。
1点を追う後半アディショナルタイム。感染症対策のため、時折起きる手拍子以外はエールが響くことがなかったスタジアムだが、最後の最後に訪れたビッグチャンスに声が漏れないはずもない。
しかし歓声はため息に変わり、直後に長いホイッスル。1対2。相手を大きく上回る18本のシュートを放ちながら、ホームで勝利を飾れなかった選手たちも天を仰いだ。
いわきグリーンフィールドで行われたJFL第24節、いわきFC対ソニー仙台。タイムアップの光景である。
平均観客2000人以上の障壁が“消えた”
J1から数えれば4番目。JFLも、Jリーグ同様、コロナウイルスの影響を大きく受けての開催となっている。
3月開幕の予定だったシーズンが始まったのは7月中旬。本来2回戦総当たりで行われるはずだったリーグ戦は1回戦総当たりに変更され、全30節が15節に短縮された。この日行われた第24節も、実際には9試合目のゲームである。
昇降格に関して言えば、やはりJリーグ同様、<昇格あり/降格なし>。つまりJ3への昇格はある。
しかも、リモートマッチや観客数の制限が行われたことで、通常の昇格要件から<1試合平均観客2000人超>が特例的に除外された。これにより<JFLで4位以内、なおかつ百年構想クラブのうちで上位2クラブ>に入り、経営面で問題がなければJ3入りできる。
実はこの<2000人超>がJリーグを目指すチームにとってはかなり高いハードルだった。
昨季も順位ではクリア(4位)していた東京武蔵野シティFCがこの条件を満たせず断念。その後、クラブは方針を変更し、(Jリーグ加盟の前提となる)百年構想クラブからも抜けた。
またJリーグ入りを狙うクラブによる観客数の水増しも発覚。もちろん許されることではないが、彼らにとって<2000人超>がそうでもしたくなるほど高く聳える壁だったことが窺い知れる事態でもあった。
しかし、今シーズンはそんな障壁がない。チームが勝って順位条件をクリアすればJ3入りが叶う。Jリーグ入りを目指すクラブにとっては絶好の機会である。