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鈴木武蔵がベルギー移籍後に語ったコンサドーレ愛「引退したら北海道に住むんじゃないかな」 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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posted2020/10/21 17:02

鈴木武蔵がベルギー移籍後に語ったコンサドーレ愛「引退したら北海道に住むんじゃないかな」<Number Web> photograph by AFLO

すでにリーグ戦2ゴールと存在感を発揮する鈴木武蔵。さらなるステップアップを求めて、ベルギーでの活躍を誓った

新天地で与えられた「10番」

 北海道に残りたい。でもプレーヤーとして成長を止めるわけにいかない。年齢も決断を急がせた理由だった。

「今の年齢(26歳)が本当のラストチャンスだと思っていたし、(移籍した)ジュピラーリーグ(ベルギー)は若い選手が多く、ビッグクラブのスカウトからも注目されていて、ステップアップにはもってこいのリーグだった。あとクラブに日本人がいないという部分も大きかった。せっかく海外に来たのに、生活でもサッカーでも甘えてしまったらもったいないなと思ったんです。体一つで海外クラブに飛び込みたかった。苦労する覚悟はもうできていたので」

 意を決して飛び込んだベルギーの地。迎え入れてくれたベールスホットが用意した背番号は「10」。海外初挑戦の日本人への異例の配慮とも言える。

「もともと10番の選手がいたのですが、マネージャーの方が『力強いナンバーを与えたい』と推薦してくれて10番を背負うことになった。サッカーをやってきて10番なんてつけたこともないし、譲ってもらったことで最初はめちゃくちゃ気にしていました」

チームメイトの信頼を勝ち取った同点弾

 戸惑いは背番号だけじゃない。チーム合流時はチームメイトからの信頼を得られず、フォーメーション練習や紅白戦などでミスをする度に「へ~イ!」と囃し立てられたり、鈴木に対して不満そうな態度をとる選手も多くいたという。

「でも、これが求めていた世界。結果を出して認めさせてやると強く思いました。そう考えているうちに、自分が10番であることすら忘れているくらい試合に集中するようになった」

 デビューは加入から2週間後の8月30日(現地時間)。リーグ第4節のスタンダール・リエージュ戦で途中出場すると、第6節のシャルルロワ戦では初スタメンを勝ち取った。その試合の後半アディショナルタイムには右足でゴールネットに突き刺し、移籍後初ゴールをマークした。続く第7節のワースラント・ベフェレン戦では途中出場から、貴重な同点弾を頭で叩き込んで、3-2の逆転勝利に貢献。この2戦連発によってある変化がもたらされた。

「初ゴールは0-3からのゴールだったので(チーム内の)評価はそこまで高くなかった。でも勝利に結びつく2点目を決めてから、僕に文句を言っていた選手の態度がガラッと変わった。まるでこれまでのことがなかったかのように。というより言ったことを忘れている感じですね(笑)。そんな変化を経験したからこそ、いまは何が何でもこのチームで一番、点を取ってやると思えている。この感覚は日本にいる時とはちょっと違って、戦術の中でどう自分が生きるかというより、早く自分の良さを分かってもらって、自分自身が戦術になるという気持ちでやっています」

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