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無能無策オーナーと会長に新監督と選手の不満大爆発! バレンシアが空中分解寸前か
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2020/10/20 17:00
リーガ3強を追う立場であるはずのバレンシア。空中分解寸前の状況から巻き返せるのか
開幕戦直前、監督の堪忍袋の緒が切れた
着任したJ・グラシアは強化担当と協力してターゲットを絞り、アンヘル・エレーラ(現グラナダ)を始め、ペペ・レイナ(現ラツィオ)、ボルハ・マジョラル(現ローマ)、ヘルマン・ペッセージャ(フィオレンティーナ)、ダニエレ・ルガーニ(現レンヌ)の獲得をクラブに求めた。が、クラブは誰も本気で獲ろうとしなかった。
J・グラシアが自ら口説いたエティエンヌ・キャプエ(ワトフォード)やジェイソン・ムリージョ(現セルタ)は、バレンシア入りを決心していたのにクラブが拒絶した。
それらは、すべてリムの意向とされている。
今季の開幕戦を翌々日に控えた9月11日、J・グラシアの堪忍袋の緒が切れた。
「皆が考えているように、バレンシアは弱くなったと私も思っている。8人が抜けたのに、新戦力はまだ1人も来ていない。なぜ誰も獲ろうとしなかったのか説明されたけれど納得いかないこともあった。個人的に尽力したケースもあったのに、失望している。お金の問題なのか、他に理由があるのか。今のままでは、バレンシアというクラブの歴史と地力に見合ったチームを作るのはムリだろう」
取り繕うかのように「補強は行う」
移籍市場が閉まる10月5日まで、ムルティ会長は取り繕うかのように「補強は行う」と口にし続けた。
しかし結局、誰一人獲らなかった。
トーレスらの売却により6000万ユーロ(約74億円)の収益を確保した上、彼らの今後の活躍次第でさらに最大2500万ユーロ(約31億円)を得られるにもかかわらず、だ。
バレンシアは2002年の夏も補強支出をゼロに抑えたが、それはリーガ制覇直後のことであり、今年は状況がまったく異なる。
ムルティ会長はこう釈明した。
「サポーターや監督が苛立つ気持ちもわかる。レベルアップのためのチーム強化は全員の願いだったが、チームコストを十分に下げられず、リーガの規定(チームコスト制限)により新戦力を迎えることができなかった」