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“欧州の辺境クラブ”は「まず、名前が読めない」 編集泣かせもCLで意外に輝くドラマ性
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byGetty Images
posted2020/10/20 20:00
見事“デンマーク代表”としてCLの舞台に挑むミッティラン。サッカーファンなら彼らのような辺境クラブも愛したい
CL初出場クラスノダールの知らない世界
ロシアのFCクラスノダールは、ミッティランと同様にCL初出場となる。
名前を聞いても、ユニフォームどころか街の場所さえ思い浮かばない人が大半だろうが、侮ってはいけない。アカデミーとトップチームの間に、二軍と三軍がしっかり整備されているのだ。
19歳から23歳までの若手が、それぞれロシアの2部と3部リーグでプレーしている。一昨季優勝したゼニトでさえ、持っているのは二軍まで。ホームページには、いつかトップチームの半数以上をアカデミー育ちで占める、と選手育成への熱い思いが記されている。規模云々ではなく、このクラブは間違いなく「豊か」だ。
中島翔哉ポルトの編集で起きた“悲劇”
選手一人ひとりに目を向ける前に、メンバーを選定するのも実は骨が折れる。この名鑑では、1クラブあたり25人掲載を基本とする。絞り込みのため、まずはクラブのホームページにあたるのだが、曲者もいる。中島翔哉が所属するポルトなど、国内リーグが開幕しているのに選手リストを載せないこともあるからだ。
それではとリーグ本体のホームページを探ると、登録メンバーに昨季の主力がおらず、急に胸騒ぎが始まる。地元メディアも、リストに入った・入らないで大騒ぎ。クラブがメンバーを正式発表しないのは、移籍市場が絶賛開催中だからだ。あの手この手での情報収集が始まる。
アザーリーグは4大リーグに選手を引き抜かれる立場にある。結果、可能性を報じられていた通り、ポルトは移籍市場最終日の10月5日にアレックス・テレスをマンチェスター・ユナイテッドに売り払った。私はゲラの大幅修正を余儀なくされた。
だが、ポルトもただでは起きない。うまく時間差攻撃を仕掛けたのだ。今季のアザーリーグは引き抜かれた穴を埋めるため、4大リーグやフランスよりも市場を長く開いていた。市場が終了しても放出は可能というイングランドのルールを利用して、ポルトは10月6日、ウェストハムからフェリペ・アンデルソンをローンで迎えた。
さらに自分たちより小さなクラブから2人を引き抜き、弱肉強食の世界を生き抜くしたたかさを示した。遠い日本では、ゲラの2度目の大手術が始まった。