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中日スカウトが明かす“2010年ドラフトの真相”「なぜ澤村拓一ではなく、大野雄大を1位指名したか」 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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posted2020/10/18 17:01

中日スカウトが明かす“2010年ドラフトの真相”「なぜ澤村拓一ではなく、大野雄大を1位指名したか」<Number Web> photograph by KYODO

2010年のドラフトで中日から1位指名を受けた大野雄大(当時、佛教大)

 じつは92年度生まれの高校3年生にも山田哲人(ヤクルト)、西川遥輝(日本ハム)、後藤駿太(オリックス)などの実力者もいたのだが、この大学4年生の“88年世代”はそれを上回る豊作だ。

 現在、田中将大(ヤンキース)、前田健太(ツインズ)、秋山翔吾(レッズ)のメジャー組に、高卒ですでにその名を轟かせていた坂本勇人(巨人)、梶谷隆幸(DeMA)。大卒でも先にあげた選手の他に柳田悠岐(ソフトバンク)がいる。社会人出身でも、石川歩(ロッテ)、宮崎敏郎(DeNA)、増田達至(西武)といて、彼らはみなタイトルホルダーである。

「巨人に一本釣りされてええんか」

 そんな“88年世代”が中心になった2010年のドラフトは、どのチームも実力・人気・将来性をふるいにかけて、選択して行ったのだった。

 人気通りの指名が多かった中、サプライズを起こしたのが中日だった。大野雄大の単独での指名に成功。後に1億円プレイヤーになるサウスポーを獲得したのである。

 だが、この選択、容易な決断ではなかった。

 米村が内情を明かす。

「うちとしては、澤村でいくか、大野かという二者択一だった。澤村が実力ナンバーワン。でも、大野のようなピッチャーはなかなか現れない、特に、うちにいないタイプやったから、大野は俺の担当やったし、獲得したい気持ちも強かった。当時、澤村が巨人以外の球団にはいかないようなことが報道で出ていて、それも気になるところだった。『巨人に一本釣りされてええんか』と」

 澤村のような逸材を巨人があっさりと獲得していく。同一リーグにいる立場として、譲れない。だから、澤村、大野での鍔迫り合いは続いた。もちろん、くじで外した場合も想定してのことだった。

【次ページ】 落合監督「大野は単独で取れるんだろうな」

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