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引退した内田篤人は19歳久保建英をどう見ている?「久保くんは、王様のようにプレーしていた」 

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松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

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photograph byAsami Enomoto

posted2020/10/21 17:03

引退した内田篤人は19歳久保建英をどう見ている?「久保くんは、王様のようにプレーしていた」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

8月に現役を引退した内田篤人。リラックスした表情でインタビューに応えてくれた

「久保くんは、王様のようにプレーしていた」

 そんな「根性」の持ち主として挙げたのは、やはり日本代表で苦楽を共にし、本質を知っている選手たちだ。

「長谷部(誠)さん、(川島)永嗣さん、岡ちゃん(岡崎慎司)、(吉田)麻也、サコ(大迫勇也)も。口では軽々しく『頑張ります』なんて言いません。チームの補強によって試合に出られなくなっても腐らずに、真面目に、黙々と練習に取り組む。そうやって監督や仲間に認められて、最終的にポジションを奪い取る。みんな根性があるんです。

 サコは今、ブレーメンでのパフォーマンスが批判されているみたいですけど、あいつなら大丈夫。技術だけじゃなくて、精神的な部分も軸が根付いているから全く心配ない。昨シーズンだって、途中まで批判されていたのに、終盤戦で点を取って勝利に導いたことで、評価を一変させたから。ブンデスリーガには、サコを欲しいクラブがいっぱいあると思いますよ」

 日本中が期待する19歳、久保建英にも気持ちの強さを感じている。

「久保くんは、良い意味で“日本人っぽくない”。ビジャレアルへ移籍したばかりなのに、第3節のバルセロナ戦では『ここにパスをくれ!』と、どんどん要求して、王様のようにプレーしていた。外国人選手ならば普通のことですけど、シャイで、バリバリ日本人の僕には到底できない。多くの日本人選手が直面する“壁”が、彼にはない気がしますね」

メディアの皆さんも気をつけてください(笑)

 内田篤人は、いわゆる「解説者」じゃない。欧州組のプレーについて語るときも、放送席や記者席から見た“上から目線”ではなく、選手たちと同じ“ピッチ目線”で捉える。

「上から見れば、サッカーは分かりやすくて、もっと説明しやすいと思います。でも、実際の選手たちに見えているものとは、違いますから。『ここにスペースがあるぞ』とか、簡単に言われるけど、敵に体を寄せられている選手は、たった1秒の間にそのスペースを見つけないといけない。視界に入っているのは敵だけって状況も、頻繁にあるんです。そこのところ、メディアの皆さんも気をつけてください(笑)。そんなピッチ上の視点からでも、瞬時にスペースや敵と味方の動きを把握してプレーできるのが、良い選手だと思います。

 この間、ロールモデルコーチとしてU-19日本代表の合宿に参加した時も、“良いところが見えているな”と感じた選手はたくさんいました。まだ技術がちょっと追いついていなかったり、キックの種類やパワーが足りていない面はあったけど、そこが伸びれば大丈夫だなって子は多かった」

 そんな若者たちに、内田はこう伝えた。

「久保くんが今、スペインであれだけやっている。でも、同世代だからって『あぁ、すげえな』って思うんじゃなくて、『俺があそこにいても全然普通だよ』って意識でやってほしい」

 本質を見抜く男の言葉は、きっと未来の欧州組にも突き刺さった。

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