フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
右肩脱臼に曲間違い…本田真凜を支えた“兄妹愛” 太一、望結、紗来もそれぞれの戦いへ
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byTakao Fujita
posted2020/10/14 17:00
東京選手権に出場した本田真凜(左)と望結。11月5日から山梨県で行われる東日本選手権で再び同じ舞台に立つ
真凜は東京選手権の2週間ほど前、右肩を脱臼した
そして、4人のうち最後の登場となったのは、今年春に明治大学に入学した真凜だ。コロナ禍のなか練習拠点の米国に渡れず、兄妹たちと共に京都周辺で練習をしながら今季を迎えた。
「今年は大学生になった特別なシーズン。まだ、今までの生活に勉強が加わり、慣れていません。1年生を乗りこえたら大丈夫だよとお兄ちゃんから言われています。1つ1つの試合を大切に、お客さんがいなくても映像の向こう側にまで伝わる演技をしたいと思います」
ところが、真凜は東京選手権の2週間ほど前、練習中に右肩を脱臼し、炎症を起こしてしまった。
「完全に練習を休んだのは3日間ですが、そのあともジャンプの練習は出来なくなってしまいました」
10月3日のジャパンオープンを欠場。この東京選手権を棄権すると全日本選手権への道は絶たれてしまうが、まともに試合で演技できる状態ではなかった。気持ちは半ば諦めかけていた。
妹に背中を押されるように出場を決めた
「(11月の)NHK杯まで試合に出ないでおこうかと思っていました。でも紗来が、(点数は)良く無かったけど前を向いて頑張っているのをみて、自分も頑張ろうと思いました」
妹に背中を押されるように出場を決めると、ジャンプを跳べなくてもできる限りの準備をした。
「ショートは全部2回転ジャンプだと通過できません。なので3回転を自分が跳べている時の映像を見て、イメージトレーニングを続けていました」
2週間ぶりにジャンプ練習をしたのは、本番朝の公式練習だけ。試合の直前、望結と2人でウォーミングアップしていると、不安そうな真凜を見た望結から 「この衣装で滑っている真凜を早く見たいな」と言葉をかけられた。ここで気持ちが固まった。
「不安はあったけど、まずはショートを通過しないといけないと思いました」
迎えたショート。『I’m an Albatraoz』では、鳥をイメージした白と黒のクールなパンツスーツ姿で登場する。もとはエキシビション曲だったものをショート用にアレンジしたため、エネルギッシュで凝った振付が詰め込まれたプログラムだ。
「運動量の多いプログラムなので今の自分にはキツかったというのが正直な感想ですが、途中でやめてしまいそうになっても『ダメ』と自分に言い聞かせて滑りました」
3回転トウループは成功し、47.29点での9位発進。怪我のなか、耐えた演技だった。
「明日のフリーはジャンプ以外で、表現面で良い演技をしたいです」
自信を取り戻した様子に見えた。