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右肩脱臼に曲間違い…本田真凜を支えた“兄妹愛” 太一、望結、紗来もそれぞれの戦いへ
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byTakao Fujita
posted2020/10/14 17:00
東京選手権に出場した本田真凜(左)と望結。11月5日から山梨県で行われる東日本選手権で再び同じ舞台に立つ
「引退の時に使おうと決めていました」
一方、太一自身は大学4年生のラストシーズンを迎えていた。集大成に選んだプログラムは、ショートが『エンシェント・ランド』で、フリーは『ショーシャンクの空に』だ。
「エンシェント・ランドは、アレクセイ・ヤグディンがソルトレークシティ五輪のエキシビで使っていた曲で、引退の時に使おうと決めていました。フリーは自分が一番好きな映画の曲に決めました」
ショート、フリーともにトリプルアクセルに挑戦。どちらも転倒せず耐える着氷だった。総合180.58点での4位と健闘し、西日本選手権へとコマを進めた。
「まずは大事な初戦で、思ったよりまとめた演技が出来ました。全日本選手権まで3カ月弱、やることが明確になりました」
今季の目標を聞かれると、妹達への思いを語った。
「真凜が2歳、僕が5歳の時に一緒にスケートを始めました。望結と紗来の2人にとっては、生まれた時から姉と兄がスケートをしていましたから、スケートをしていない兄というのを知らない。僕が引退することで妹達が崩れてしまうことなく頑張れるよう、今季は集大成として、しっかりとした練習の姿と演技を見せたいです」
22歳の兄として、3人の妹へエールを送った。
本田武史コーチ「望結はとにかく頑張り屋さん」
その5日後、今度は東京選手権が開幕した。真凜はJALの所属、望結はプリンスホテル所属となっているため、練習は関西で行っているが、東京の地区予選への参加となったのだ。
今季がシニアデビューとなる望結は、全日本選手権への初出場が目標。「女優業とスケートの両方を頑張る」と決め、人一倍の忙しさを乗りこえてきた。本田武史コーチが、「望結はとにかく頑張り屋さん。芸能活動がどんなに忙しくても、貸切の残り時間が30分しかなくても来る子です」と評価するほどの努力家だ。
ショートはノリの良いプログラム『My Dilemma』。フリーは力強い『鼓動』の曲で、初々しい色気を振りまきながら、元気に氷上を駆け抜けた。
「アイスショーで使うようなお客さんが楽しめる曲が、自分に合っているなと思い選びました」という。総合123.31点で総合12位となり、東日本選手権への出場権を獲得した。太一、真凜と共に全日本選手権へ出たいという夢を一歩前進させたのだ。
「兄はスケートについて本当に詳しくて、練習でもすごく頼りになります。今季はもちろん、来季もお兄ちゃんに『上手になった』と言われる試合をしないといけないと思います。真凜については、姉というよりも本田真凜選手というトップスケーターにすごく憧れを持っています。お姉ちゃんの背中を見て、出来るだけ近くに行きたいですし、勝つのが目標といえるくらいの選手になりたいです」