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引退・ヤクルト五十嵐亮太41歳 「ケガは恥ずかしい。でも…」4年前、“元祖速球王”が語っていたこと
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJiji Press
posted2020/10/12 17:02
ヤクルトは10月12日、五十嵐亮太が、今季限りで現役を引退すると発表した(写真は2000年プロ野球オールスター)
現在37歳、ホークスでは最年長選手。
五十嵐も今年でプロ19年目だ。5月で37歳になった。加齢はアスリートの敵だ。以前、30代後半に差し掛かったところで引退した、ある元選手がこんな話をしていた。
「辞めるのを決意したのは試合での走塁中に肉離れを起こしたからだった。運動選手が走っただけで故障するようになったらオシマイよ」
故障当初、五十嵐もひどく落ち込んでいたと球団関係者が話していた。37歳は、ホークスでは捕手の細川亨と現在二軍のカニザレスと並び、チーム最年長なのだ。
でも――五十嵐は言った。
「怪我をしたことは僕自身の責任だし、恥ずかしいことです。だけど、その時間を無駄にしたくないと考えました。また一軍に戻ったときに同じパフォーマンスでは意味がない。成長して戻ろうと考えて、二軍での時間を過ごしていました」
文句のつけようがない成績でも、不満だった。
昨年、54試合に登板して3勝1敗2セーブ31ホールド、防御率1.38の成績。文句などつけようのない数字が並ぶが、五十嵐は不満だった。ホークスでも当初は150キロ台中盤を投げていたが、昨年は150キロを超えるのがやっと。自慢のスピードが落ちたと感じていたのだ。
それでも、抑えているわけだし、投手によっては見た目の球速よりも球質いわゆるキレの方が大事だといった声をよく耳にする。これまで出会った大半の投手がそうかもしれない。その言葉に、ファンとの温度差を感じることが少なくなかった。
だが、五十嵐は違う。いや、違うとは言いきれないが、彼らしい表現だった。
「僕はどちらも大切だと思います。片方だけが良ければいいということはないし、常に成長をするためには両方を追い求めていかなければいけないと思います」
二軍にいるあいだ、フォームの改良に取り組んだ。昨季は肘に痛みを感じたこともあり、腕の位置がやや下がっていた。
球速を取り戻すヒントは、かつてプレーしたメジャーが与えてくれた。