酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ドラフトの大穴!? 独立Lの右腕・片岡篤志が覚醒!「夢を見るのは今年で最後です」
posted2020/10/12 11:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
「片岡篤志」でネット検索をかけても1字違いの元日本ハム、阪神の名内野手の名前が出てくるくらいだ。今どきのネットでは、ちょっとした有望選手なら細かな情報まで上がってくるが、片岡篤志の名はほとんどない。
それもそのはず。片岡篤志は今年の8月まで全くの「無印」だった。新型コロナ禍で、世間が揺れる中で24歳の片岡は、突如として頭角を現し始めたのだ。
滋賀県出身、軟式のクラブチームから大津商業に進んだ。同世代には今や巨人の不動の四番、岡本和真(智辯学園)がいる。同じ滋賀県でも、阪神で活躍する植田海(近江)がいるが……。
「僕は対戦したことはないですね。大津商業では一応主戦級だったのですが、3年生の夏前に股関節を怪我して夏は投げることができませんでした。学校も初戦(2回戦)で滋賀学園に敗退したので、全く無名の存在でした」
高校でも大学でも鳴かず飛ばずだったが
それでも野球で国際武道大に進んだ。千葉県にあるこの大学は、2017、18年と全日本大学野球選手権大会で準優勝するなど、急速に力をつけてきた。OBには元中日の友永翔太、元阪神、ロッテの柴田講平などがいる。現役でも、ともにオリックスの比嘉幹貴、K-鈴木、西野真弘らが活躍している。
「でも、大学でも全く目立たず、ベンチ入りしたことはありません。1年後輩には去年のドラフトでオリックスに入った勝俣翔貴がいますが、僕自身は全然すごい選手ではありませんでした。当時は最速で140km/hくらい。でもばらつきがあって悪い時は130km/hいかないくらいでした」
高校でも大学でも鳴かず飛ばずであれば、普通は野球をあきらめ、就職を考えるものだ。
「実際、就職するつもりで一般企業を受けて内定をもらっていました。会社に入ったら働きながらクラブチームか草野球でもやろうかなと思っていたのですが、大学の野球部を引退してから、自分で考えてトレーニングをしていたら球速が上がってきて、結構よくなってきたんです。
それで“記念受験”のつもりで、独立リーグ四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズのテストを受けたら合格してしまいました。せっかくのチャンスなので、もう1回トライしてみようと、会社の方をお断りして香川に入団したんです」