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笑顔と「サンキュー!」と努力は続くも…渋野日向子、全英制覇の意識を「もう捨てていい」
text by
南しずかShizuka Minami
photograph byAP/AFLO
posted2020/10/13 11:01
米国遠征4試合目となる全米女子プロ選手権で58位タイに終わった渋野。悔しい思いを胸に日本へ帰国する
本人は力不足を口にするも、周囲の意見は?
そうはいっても、全英女子オープン制覇という偉業を成し遂げたのは事実である。「うーん、もう(メジャー覇者という意識を)捨てていいんじゃないかなと。日本では42年ぶり(のメジャー制覇)だったので、何かを背負っていかなければいけないのかもしれないですけど」
己の力不足に悔しさを隠せないが、元世界アマチュアランキング1位で、今大会のラウンドレポーターを務めた片平光紀の見解は違う。片平は、渋野が出場したアメリカ本土での4試合を現場で見届けた。
「渋野選手は『もっとロースコアでまわりたい』という気持ちが強いと思うんですけど、アプローチショットの種類が増えてて感心しました」
深いラフからのチップインバーディ
特に印象に残っているプレーがある。
9月18日、ポートランド・クラシックの初日の6番の第3打である。左足下がりのライで、グリーン奥の深いラフにボールが埋まっていた。ラフからピンまで下りの傾斜が強く、ボギーを叩いてもしょうがないという状況だった。
そこで、渋野はロブショットを放ち、チップインバーディを決めた。
「あの6番は、日本ではなかなか見かけることがない厳しいピンポジションでした。つまり、日本からスポット参戦すると、どうやって打っていいか分からない場面だと思うのですが、ロブショットの打ち方を知ってるというその対応力に驚きました」
その対応力は、日々の練習で養われていることに片平は気づいた。
「ほぼ毎日、試合が終わると、夜暗くなるまで練習してたんですよ。『昨日は日没が早くて、全然練習できなかったです』と、チーム渋野の方が言ってたことがあるんですが、その日は試合が4時ごろに終わったんですね。日没が7時ごろなので、3時間の練習でも全然できなかったっていうのは意識が高いなと。試合後で疲れているかもしれませんが、渋野選手は納得いくまで練習しているんです。なんで試合期間中に、不慣れなコースや芝にすぐ対応していけているのか納得できました」
技を習得するスピードが速い。だが、まだ足りないものが多すぎると、全米女子プロの第3ラウンドの後に、渋野がグリーン周りとパッティングを課題にあげた。
「今までは飛距離が必要だとすごく思っていたんですけど、飛距離以外のことで何打も縮められると、すごく実感しました。この6試合でグリーン周りで何度も損したことと、2m以内のパッティングを外す回数がすごく多かったです。(パッティングに関しては、)自分のイメージ通りのボールの速さ、イメージしたライン、狙ったラインを打てる練習を重ねていかないといけないのかなと思います」