欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
アンチェロッティとハメスの魔法でエバートン4連勝 “インザーギ的”点取り屋が覚醒か
posted2020/10/13 20:00
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
隣の芝生が青く見える──。
一昨シーズンはヨーロッパのテッペンに立ち、昨シーズンはプレミアリーグを制した。ゲーゲンプレスは時代の最先端ともてはやされ、綿密な人選に基づく的確な補強は、世界中が模範とすべきクラブと高く評価されている。
「どいつもこいつもリバプールばかりチヤホヤしやがって」
エバトニアン(エバートン・サポーターの呼称)は地団太を踏んでいる。
だいたい、エバートンの方が歴史は古い。クラブ創設はリバプールより14年も早い1878年だ。エバトニアンからすれば、われこそがマージーサイドの本家となる。
「リバプールのヤツらめが“分家”の分際で……」
はらわたが煮えくり返る。
アルテタ、ケーヒル、そしてルーニー
栄光に彩られた歴史もある。トップリーグ優勝9回、FAカップは5回も制した。
想い出に残るヒーローたちも、ウェールズ史上最高のGKといわれたネビル・サウソール、強さとスピード、高さを兼ね備えたCBのジョセフ・ヨボ、冷静沈着なキャプテンだったミケル・アルテタ、小さなストロングヘッダーことティム・ケーヒルなどなど、枚挙に暇がない。
また、あのウェイン・ルーニーの古巣であり、彼が憧れた屈強のFWダンカン・マッケンジーは、昨シーズンの中盤戦からコーチとしてベンチからにらみを利かせている。
しかし、過去を振り返るだけでは意味がない。フットボールは現在進行形であり、年ごとに長足の進歩を遂げる特異なスポーツだ。その昔はゲーゲンプレスもポゼッションも異端だった。この波に、エバートンは乗り遅れた。
可もなく不可もないシーズンが、長く長く続いている。1992年のプレミリーグ発足以降、一度も降格していないが、優勝争いにも加わっていない。FAカップ戴冠も1994-95シーズンが最後だ。