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「いかに頭を使って天賦の才に勝つか」ダルビッシュ有が語った近いようで遠い“真のトップ”との差
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2020/10/07 20:00
ダルビッシュ有が所属するシカゴ・カブスは10月2日、ワイルドカード・シリーズ(WCS)敗退が決まった
今季のダルビッシュは何がそんなに良いのか?
新型コロナウイルスの感染拡大で60試合に大幅縮小されたシーズン、カブスはキャンプが再開された7月からずっと、内野手も外野手も全体練習の前にグラウンドに姿を現し、去年まではやらなかったような守備練習に取り組んできたのだ。それはある種の誇りをカブス守備陣に植え付けた。
前日の試合が悪天候で中止になる前、シュワバーは「今季のダルビッシュは何がそんなに良いのか?」と問われ、こう答えている。
「まず何よりも健康であること。次に自信に溢れていること。そして彼の後ろにはグレート・ディフェンスがあることだ」
味方の好守が試合の流れを変え、攻撃にリズムが生まれることはよくあることだ。あまりの貧打ぶりに次第に焦燥感を募らせていた我々メディアだけではなく、テレビやラジオで戦況を見守っていた日米のファンもきっと、「その瞬間(とき)」が来るのを待ち続けていただろう。
しかし、4回1死一、二塁のチャンスでは、後続の右前打で難しいスタートを切った二塁走者が右翼手の好返球により本塁で刺され、2安打1死球で満塁のチャンスを掴んだ5回も無得点に終わってしまった。
そんな「負の流れ」を断ち切るのは誰にとっても簡単じゃない。6回を77球で乗り切ったダルビッシュは、7回も簡単に2死を取ったものの、5番ギャレット・クーパーに左越えソロ本塁打を打たれると、後続の二塁打と申告敬遠で2死一、二塁とし、前の打席で速球にも変化球にも食らいついて10球粘った(結果は見逃し三振)8番マグニューリス・シエラに右前に弾き返され、決定的な2点目を失った。
もう1試合、“生ける伝説”に投げてほしかった……
試合後、ロス監督に続いて姿を現したダルビッシュは、リモート会見でこう話した。
「レスターに最低でももう1試合、リグリー(フィールド)で投げてもらいたいっていうのが、僕の今日の一番で唯一のモチベーションだった」
第2戦にカブスが勝って1勝1敗となった場合、今季いっぱいで6年契約を全うする左腕ジョン・レスターが第3戦のマウンドに上がる予定だった。カブスのプレーオフ敗退は、レスターが「仔熊」のユニフォームを着てマウンドに上がることがなくなったことを意味していた。