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自己最低打率.190に終わった大谷翔平「悪い部分は伸びしろ」だが来季は失敗できない
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byKYODO
posted2020/10/04 11:00
60試合制の今シーズン、大谷は打者として44試合に出場。自己最低打率の.190に終わった。
『去年と同じことをやるつもりはない』
あのイチローさんでさえそうだった。毎年課題を持ち、新たな技術習得のためにオフシーズンから鍛錬を重ね、春キャンプ、オープン戦だけでなく公式戦に入っての100から150打席を微調整の期間にあてた。そして、その年の完成型が出来上がるのは40試合を過ぎた頃が普通だった。稀ではあったが、なかなかうまくいかずに元の型に戻したシーズンさえもあった。それほどに打撃技術とは繊細なものだという。
実は大谷も9月4日にこんな言葉を残している。
「やりたいことというのは、去年とはまた違うところもあるので、その結果、ズレてきたりというのもあると思うんですけど、去年と同じようなことをずっとやるつもりはないですし、1回1回もっと良くなるように工夫して打席には立ちたいなと思っています」
今季の大谷を表すのに、これ以上の言葉はないと感じている。
『やりたいことは去年とは違う』
目指したものは、ボールとの距離がとりづらい、体に近い速球系のボールを右方向に強く打ち返すことだった。
メジャーでの昨季までの2年間で彼は、同様の球種、コースを、それが投手有利のカウントに追い込まれた時でも、逆方向に打つことで対応をはかり、結果も残してきた。
だが、今季はそれを右方向に強く打ち返すことで投手への優位性を更に高めようとした。
『去年と同じことをずっとやるつもりはない』
打者の技術追求とは基本的には不得手なものを克服することにある。メジャーでは155キロ超で正確にコントロールされた剛球が容赦なく内角や高めに投じられる。それが更に厄介なのは、4シームだったりシンカー系であったりカット系だったりすることにある。大谷はこの厄介なボールを“カチン”と強く右方向に打ちたかった。それが今季「やりたいこと」だった。
「タイミングが早いので体の開きが早くなっている」
だが、目論見通りにはいかなかった。
『その結果、ズレてきた』
元来持っていた、体に近い速球系を逆方向に打つ技術にまで狂いが生じ、元に戻そうとしてもうまくいかないことが多くなった。そんな打撃状態を彼はこの言葉で表現した。
『タイミングと(ボールと投手との)距離感がズレていた』
ジョー・マドン監督がこの点については分かりやすい解説をしてくれたことがある。