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「二軍で終わるんじゃねぇ」阪神戦力外→独立リーグ→ヤクルト、歳内宏明を支える“恩師との電話”
posted2020/09/29 11:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
KYODO
ヤクルトと正式契約を交わす9月6日から遡ること数日前、歳内宏明は恩師である聖光学院の斎藤智也監督に電話で吉報を届けた。
「ヤクルトに決まりました。最初の登板は二軍になりますけど、結果次第では一軍に上がれるかもしれないんで頑張ります」
2012年にプロとなって以降、二軍であっても自分が投げた試合後には夜遅くでも必ず連絡を入れた。19年に阪神を戦力外となった際も、独立・香川で再スタートを切ることが決まったときも歳内は報告を欠かさなかった。
斎藤への恩義も当然ある。ただ、それ以上に、恩師との会話は歳内にとって道しるべとなるほど濃密でもあるからだ。かつての彼の言葉が、それを物語っていた。
「そのときだからこそ言ってもらえる言葉もありますし。高校を卒業してからは、腹を割って話をさせてもらえていますね」
「二軍で終わるんじゃねぇ」
ヤクルト入団を報告したときがそうだ。斎藤からの激励は、「頑張れ」というありきたりなものだけでは終わらなかった。
「今のお前なら二軍で抑えられる。せっかくプロの世界に戻ってきたんだから、そこで終わるんじゃねぇ。ヤクルトのエースになるつもりで、一軍でも抑えてみろ!」
プロ野球を一度、戦力外となった選手に対しては、やや飛躍したエールである。しかし、斎藤としては、根拠なく大仰な言葉を贈ったわけではなかった。
防御率0.42「独立リーグで無双状態」
歳内は香川で、有言実行を果たした。