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「五輪に間に合わない」大ケガを乗り越えて アルペンスキー・新井真季子の告白
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2020/09/28 11:30
新井は1993年6月12日生まれ。08年ジュニア五輪の大回転で準優勝、回転で優勝。その才能には早くから注目が集まっていた
「かわることなく一緒に戦ってくれる」
何度も打ちのめされながら、そのたびに立ち上がってきた。
「リハビリしているとき、ほかのスポーツ、同じ競技の選手でやはりリハビリに励む人が身近にたくさんいて、みんなの頑張っている姿があって自分も頑張ろうと思いました」
そして、こう続けた。
「自分の強みは何かと聞かれたら、まわりに恵まれていることです。トレーニングでもリハビリでも、用具の方も、たくさんの方がサポート、バックアップしてくれる。
いいときはたくさん人が集まってくるけれど、そうじゃないと離れていくことってあるじゃないですか。でも自分のまわりは、かわることなく一緒に戦ってくれる。恵まれているなって思います」
そして、かわることのない競技への思いがある。
「身体だけで降りてくるので、スピード感を直接感じられるスポーツですし、タイムで勝負が決まるので分かりやすい。一度の滑りはだいたい1分くらい、失敗すれば3秒で終わってしまうこともあります。レースは一瞬です。でもそのために、練習も何もかも、やっているんです」
「信じて進むしかないと思っています」
ふと、理想に近い滑りができたときは? と尋ねると、こう答えた。
「怪我をする前のときにあったかもしれません」
今も理想を求める心はある。
例年ならすでに雪上で練習している夏場だが、今年はかなわずトレーナーとともにトレーニングに取り組む。
「(北京五輪が)正直あるかどうか分からないのが今の状況だと思います」
目標とする場所が、どこか彩度を欠くことが影を投げる。
それでも。
「今、やめてしまう理由はないし、決めた目標に向けて信じて進むしかないと思っています」
理想を追い求めて、速くなりたいという思いとともに、大舞台を見据える。