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“J5”監督挑戦、岡山一成「指導者って夢がある」 コロナ禍と雷の記憶、鬼木達の助言
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2020/09/16 17:05
VONDS市原の監督に就任した岡山一成。新型コロナウイルスの影響について触れつつも、JFL昇格への意欲を語った。
「1週間、介護の仕事を控えてもらいました」
相手チームに新型コロナウイルス感染者との濃厚接触者が出て、7月19日に予定されていた試合が直前になって8月9日に延期されたのだ。
Jリーグのプロクラブなら、新たに定められた試合日に向けてトレーニングをするだけだが、アマチュアリーグではそう簡単にはいかない。有給休暇を取り直し、勤務スケジュールを調整し直さなければならないからだ。
しかも、VONDS市原の場合、介護施設で働いている選手が多いのだ。もし、選手が新型コロナウイルスに感染し、自覚症状のないままに、高齢者と接触し続けたら……。
「だから8月9日の試合を終えたあと、出場した選手たちは念のために1週間、介護の仕事を控えてもらいました。職場を休むにあたっては、自分たちが勝ち取った有給休暇を消化しなければならない。今回は試合前に分かったからまだいいんですけど、試合後に濃厚接触者がいたことが判明したら……。だから、うちもリーグと連係を取りながら、情報をしっかり共有していきたいと思います」
2戦連続で1-0勝利も「まだまだですわ」
迎えたCriacao Shinjuku戦。元浦和レッズのGK岩舘直や元徳島ヴォルティスのDF井筒陸也を擁する相手に対し、10番を背負う野田卓宏を中心にしたパスワークでVONDS市原は攻め込んでいった。
スコアが動くのは後半4分、かつて大分トリニータに在籍した11番の野上拓哉が右サイドからカットインして鮮やかなミドルシュートを突き刺した。その後も初戦の反省からか、攻撃の手を緩めず、押し込んでいく。
ゲーム終盤、立て続けにCKを取られ、相手はGK岩舘まで攻撃参加させてきたが、なんとか凌いで2試合続けて1-0の勝利を飾った。
試合後、夕日が差すピッチ上で円になってストレッチをしている選手たちに声を掛けて回った岡山監督は、ベンチの裏までやって来ると、嬉しさと悔しさがない混ぜになったような笑顔を見せた。
「いやあ、2点目を取れるチャンスはあったんですけどねえ。まだまだですわ」
近くに、途中出場だった9番の池田晃太を見つけると、彼を呼んでこう紹介した。
「今回はサブだったけど、イケはスタメンで出る力がある。ただ、『今はいろいろな戦い方を試しておきたいから、我慢してくれ』と話してるんです」