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大坂なおみ圧巻のサーブ力。ファースト84%、強化したセカンド69%。もう1つの理由は……。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/09/08 17:00
大坂なおみの武器と言えば男子選手顔負けのサーブ。それが今回の全米ではさらに効果を発揮している。
右肩の痛みがようやく消えた。
また、サーブが好調の理由は半年間の充実した練習ともう1つ。右肩の痛みがようやく消えたことだ。
昨年10月に優勝した北京の決勝で右肩を痛め、それが悪化してWTAファイナルズも途中欠場。シーズンオフもそのケガのせいでサーブの練習が思うようにできなかった。
今季は開幕戦のブリスベンでベスト4に入ったものの、全豪オープンは3回戦で15歳のコリ・ガウフにストレート負けし、エースとして頼りにされたフェドカップでは世界ランク78位を相手に0-6、3-6と完敗した。試合中に泣き出し、戦いを放棄するような素振りさえ見せたが、あの精神面の不安定さの向こうには肩が回復しない苛立ちもあったと思われる。
「肩の痛みを感じずにプレーできているのは北京以来」と、前哨戦の初戦のあとに話していた。ツアー再開からこれまで、たまにラケットを放り投げることはあっても、大半の時間を穏やかな気持ちで冷静にプレーできている理由の1つがうかがえる。
左太股にテープを巻いていても。
選手は誰もがいつもどこかに痛みを抱えているものだと言われる。現に大坂も、肩は癒えたとはいえ前哨戦で痛めた左太股には2回戦以降テープを巻き続けたままだ。しかし、<足>は大坂の最大の武器ではないという意味で、肩のケガに比べれば精神的なダメージは大きくないのかもしれない。
また実際のところ、前後に揺さぶられたときに多少苦しんでいるように見えるものの、ベースラインでの左右の動きにまったく問題はなさそうだ。ランニングショットで鮮やかなウィナーを奪う場面も何度もあった。
「世界最高のプレーヤーたちを相手に、自分自身を試すためにここに来た。半年の間にやってきたトレーニングが正しかったかどうか知りたかったの。今も勝ち残っていられて、とてもうれしい」と大坂。その満足感が大会後半戦のパフォーマンスにどんな<プラスα>をもたらすか。