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大坂なおみ「プライドをかけてここにいる」。土居美咲との全米OP初戦、かつてない逞しさと使命。
posted2020/09/02 11:50
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
世界中のアスリート、エンターテイナーを闇に迷い込ませた100年に一度のパンデミックの中、テニスの全米オープンが開幕した。グランドスラムの中でも最大規模の2万3000人を収容するセンターコート、アーサー・アッシュ・スタジアムに観客はいない。
もしそこがいつものように多くのファンで埋まっていたなら、開幕日のナイトセッションに登場した大坂なおみはどれほど熱狂的に迎え入れられたことだろうか。
2年前、この場所で初めてグランドスラムのトロフィーを掲げた20歳のチャンピオンは、そのパワフルなプレーとユニークなキャラクターで一躍世界中の人気者となった。それから5カ月の間に2つ目のメジャータイトルを獲得し、女王の座に君臨。史上もっとも稼ぐ女子アスリートにもなった。
自分の性格を「シャイ」だといつも言っていた女の子は、今や絶大な発言力を持って自身が信じる正義を世界に訴える稀有な若きスターアスリートだ。
特にこの1週間、大坂が世界に向けて議論のきっかけを投げかけた行動は、少なくとも黒人のプロテニスプレーヤーのパイオニアであるアーサー・アッシュの名を冠したこのスタジアムでは、圧倒的な支持で迎えられたに違いない。その光景を見ることはできなかったが、大坂は目に見えないサポートをしっかりとその背に受け止めているかのように、力強く堂々と、再び頂点への一歩を踏み出した。
ダブルスを組んだこともある土居戦。
左太股の負傷により、ウエスタン・アンド・サザン・オープンの決勝戦を棄権してから2日目の夜。危ぶまれていた欠場が回避されて安堵したものの、いきなりの日本人対決となったのは日本のファンには残念なことだった。
土居美咲は最新の世界ランク81位の29歳で、大坂にとっては今年の2月のフェドカップをともに戦ったチームメートでもあり、2016年にダブルスを組んだこともある。
159cmと小柄ながら、左利き特有のトップスピンを武器としたアグレッシブな展開が持ち味だ。トップ10からの勝利こそ数少ないが、アナ・イバノビッチやアンジェリック・ケルバーといった元女王たち相手に幾度となく善戦した姿が印象深い。