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大坂なおみ「プライドをかけてここにいる」。土居美咲との全米OP初戦、かつてない逞しさと使命。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/09/02 11:50
第2セットを土居美咲に取られたものの、最終セットで貫録を見せた大坂なおみ。同大会2度目の優勝に向けて歩み始めた。
太股のケガと数々のプレッシャー。
この危険な対戦者以外にも、大坂は見えない敵を抱えていると思われた。
1つは太股のケガ。そして数々のプレッシャーである。大会の初戦、特に誰もが照準を合わせているグランドスラムの初戦は、トップ選手にとって「勝って当然」な分だけ重圧が大きい。
相手が同国の選手となればなおさら平常のメンタルで戦うことが難しい。それに加え、テニスの外で高まっている大坂への注目の高さがどう影響するか。マイナスに作用することも十分にありえた。
試合は、「自分は完全なチャレンジャーなので向かっていくだけ。すごくわくわくしている」と話していた土居の危なげないサービスキープでスタートした。しかし大坂は第3ゲームと第7ゲームと2度ブレークに成功して、第1セットを6-2で先取。しかし第2セットは第2ゲームでブレークを許して2-5までリードを許す。
「相手がレベルを上げてきたことを感じたときはちょっと難しい。負けて失うものはないと思って向かってくる場合もある。第2セットはそんな感じだった」
あとでそう振り返った大坂は、第9ゲームでブレークバックして5-5に追いついたものの、第11ゲームのリターンでは3度のブレークポイントを逃し、続くサービスゲームでは40-15からブレークを許して5-7でセットを奪われた。
最終セットは第1ゲームで2度のダブルフォルトをおかした土居の隙を突いて、40-15から4ポイント連取でブレークに成功。第2ゲームで2度のブレークポイントをしのいでキープすると、その後は危なげなく、3-2から3ゲーム連取で試合を締めくくった。
「私のことが嫌いだと言われても」
破壊力は言うまでもないが、印象的だったのはウエスタン・アンド・サザン・オープンでもそうだったように、どんな局面でも冷静で集中していることだ。メンタルの状態について大坂自身はこう話した。
「私が(人種差別に抗議する)声を上げるようになってから、ストレスがさらに大きくなったんじゃないかって多くの人たちに聞かれるけど、正直なところ、そんなことはないわ。私のことが嫌いだと言われても、それはしょうがない。私はプライドをかけてここにいるつもり」