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大坂なおみ「プライドをかけてここにいる」。土居美咲との全米OP初戦、かつてない逞しさと使命。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/09/02 11:50
第2セットを土居美咲に取られたものの、最終セットで貫録を見せた大坂なおみ。同大会2度目の優勝に向けて歩み始めた。
かつてない角度から逞しくなる心。
数日前、自分の起こした行動に対する反響に怯えていたと告白した大坂は、実際に激励や支持ではない否定的な意見も見聞きしたに違いない。それでも自分の信念を貫いている。
彼女のメンタルは今、かつてない角度からのアプローチによってより逞しくなっているかのように見える。
スタジアムに着用して来た黒いマスクには、白い文字で「Breonna Taylor」と書かれていた。3月に自宅で警官に射殺された黒人女性の名だ。
「彼女に起こった出来事を知らない人たちも世界にはたくさんいると思う。テニスは世界中の人が見るから、私がこれをつけることで多くの人に知ってもらい、関心を持ってもらいたいと思った」
脚の状態は「少し悪化した」が。
決勝まで勝ち進めば7試合。だから7枚のマスクを用意しているのだとオンコート・インタビューで明かし、「悲しいことに7枚では足りないけれど、決勝までいって全て見せる」と誓った。
女子はトップ10のうち6人も欠場し、観客もいない会場では、テンションを上げるのも、明確なモチベーションを抱いてそれを維持するのも難しい。しかし、大坂は勝ち進まねばならない大きな使命を自分に与えている。
脚の状態は期待したほど回復しておらず、しかも2時間3分の試合で「少し悪化した」にもかかわらず。その使命感こそがエネルギーなのかもしれない。テニスを舞台に大坂が貫く行動の意味を、私たちはこの後どのようなかたちで知ることになるのだろうか。