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ジオリートのノーヒッターが示す事。
「2年前、最悪の投手だった彼が……」 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2020/08/31 19:00

ジオリートのノーヒッターが示す事。「2年前、最悪の投手だった彼が……」<Number Web> photograph by Getty Images

ノーヒッターを記録してチームメイトに祝福されるルーカス・ジオリート。選手の成長曲線とは読めないものなのだ。

2年前の防御率はなんと6.13。

 最悪や最高の基準を簡単には説明できないが、それは間違いではないだろう。ギーエンの言う「2年前」、すなわち2018年、ジオリートは公式戦で100敗(62勝)したチームで唯一、二桁10勝(13敗)を挙げながらも、32試合に先発して173.1回を投げて被安打166、防御率6.13とまさに「最悪」。

 与四球90、自責点118点は共にア・リーグ最多の不名誉な記録だ。

 ただし、当時からジオリートは「stuff guy」、つまり「持ち球は凄いやつ」と認められており、これまた前出の通り、150キロ台半ばから後半の4シーム・ファストボール=速球やチェンジアップは、ツイッターなどのSNSでも野球ファンに頻繁に取り上げられたほどだった。

 ジオリートは記録達成後、こう言っている。

「(ノーヒッターについて)2018年に訊かれたら『なにバカなこと言ってんだ?』て思っただろうけど、あの年はおかしな1年だった。努力と決意、どのように自分を信じるか、自分の持ち球を信じるかってことが生み出したんだと思う」

 その言葉は今回のノーヒッターだけではなく、去年の公式戦の急成長にも当てはまる。彼は29試合に先発して9連勝を飾るなどして14勝(9敗)を挙げ、176.2回を投げて防御率3.41、228奪三振。与四球は57(前年比-33)で自責点67点(同-51)と大幅に向上し、周囲の誰もが「エース」と認める活躍を見せた。

急上昇した理由は……?

 急上昇した理由は諸説あるが、もっとも有名なのはジオリートのテイクバックが小さくなったこと。なるほど、2018年までの彼は「sweeping action」と呼ばれるほど右腕を伸ばして大きく後ろに引いてからトップの位置に右手を持ってきていたが、去年から腕を伸ばすことなくコンパクトな腕の動きになった。

 MLBネットワークの解説者でメッツなどで活躍したロン・ダーリングは、それが下半身との動きが連動しやすくなって制球力が向上した理由だと指摘し、打者からは球の出所が見えづらくなったと言っている。

【次ページ】 手術からの復帰過程で得た得意球。

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