野球クロスロードBACK NUMBER
2年前の新人王が再び上昇気流に。
楽天・田中和基の「±0の気持ち」。
posted2020/08/28 08:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Kyodo News
快打を重ね、上昇気流に乗る楽天・田中和基の姿は、ブレークを果たした2018年の軌跡をたどっているようだ。
8月4日に今季一軍初昇格を果たした当初は、代走や守備固めだった。それが今では、3割7分3厘(成績はすべて8月25日現在)と高打率をマークしスタメンの座を勝ち取っている。田中自身、毎年のように課題に挙げている右打席のパフォーマンスも、8打数4安打の5割とハイアベレージを維持し、弱点を克服しつつある。
今季の楽天の外野陣はレベルが高い。
不動のレギュラーである島内宏明をはじめ、高い守備力と走力を誇る2年目の辰己涼介。DHと併用するジャバリ・ブラッシュとオリックスから新加入のステフェン・ロメロには一発があり、オコエ瑠偉や小郷裕哉ら若手たちも力を蓄えている。
そんな激しい外野争いのなか、4年目のスイッチヒッターは再び力を示そうとしている。
向上心の塊だが、最悪の事態も想定。
「うちのチームはみんな、スタメンで出てもおかしくない力がありますもんね」
今年の春季キャンプで、他人事のようにチーム事情を語っていた田中を思い出す。
福岡県屈指の進学校でありながら、野球では無名に近い西南学院から「東京六大学野球で力を試したい」と、文武両道を貫き指定校推薦で立教大に入学。大学でも、スポーツ推薦が多いコミュニティ福祉学部でなく法学部だった田中は、一般学生と同じカリキュラムを消化しながら野球部でレギュラーを獲得し、楽天にドラフト3位入団を果たした。
経歴からもわかるように向上心の塊のような男ではあるのだが、一方で物事への捉え方は現実的、一喜一憂せず冷静に行動できるのも田中という人間である。
だからこそ、好調時であろうと浮かれることはない。むしろ、同時に「最悪の事態」も想定しながら野球に取り組むのが田中である。