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2年前の新人王が再び上昇気流に。
楽天・田中和基の「±0の気持ち」。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2020/08/28 08:00
プロ入り2年目の2018年に新人王に輝いた楽天・田中和基。好調楽天でスタメンを掴んだ。
2018年はよかった年、2019年は悪かった年。
新人王を獲得した2年目の2018年が、まさにそうだった。
2割6分5厘、18本塁打、21盗塁と飛躍を遂げながら、田中はあたかも他の選手を解説するかのように、自分の「現在と未来」を分析していたものである。
「2年目ですけど、ずっと試合に出たのは今年が初めてですからね。『自然体でやった結果、これだけの数字を残せた』みたいな感じです。もしかしたら、今年の成績がプロのキャリアハイかもしれないし、仮に来年、3割30本を打てたら、よかった要因をしっかり覚えておけばいいというか。
逆に1本か2本しかホームランが打てなかったら、それまでやってきたことを見直せばいい。そもそも、怪我をするかもしれないし、何が起きるかわからないですからね」
'18年が田中にとって「よかった1年」ならば、'19年は「悪かった1年」だった。
3月の台湾遠征で右足首を負傷。5月に左手首を骨折したことでパフォーマンスに狂いが生じ、このシーズンは1割8分8厘、1本塁打。皮肉にも、田中が想定していた「1本かもしれないし、怪我をするかもしれない」という予測が、現実となってしまった。
「これで、±0の気持ちです」
田中はジェットコースターのような'18年からの2年間を、淡々と回想していた。
「2018年は初めてのことばかりで、ピッチャーとの勝負がメインで。2019年は手首との勝負でした」
そして、笑いながら言葉を加えた。
「これで、±0の気持ちです」
田中の言葉を借りれば、今年は「ゼロからのスタート」になるだろう。
過去の2年間を踏まえ、田中は自分を見つめ直した。今年は自主トレから「1年間を戦えるだけの体を作る」と明確なテーマを持ってフィジカル強化に励み、課題の右打席の鍛錬も積んだ上でシーズンを迎えられた。