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自転車で「鹿児島→北海道」を6日半!
ギネスに挑んだ最強ホビーレーサー。
posted2020/08/29 19:00
text by
柳橋閑Kan Yanagibashi
photograph by
Kenichi Yamamoto
自転車で日本縦断2600km──。
といっても、夏休みに自転車少年が1カ月かけて旅をするのとはわけが違う。レース用のロードバイクを駆り、睡眠時間をぎりぎりまで削って、ギネスの最速記録に挑戦するサイクリストたちがいる。
これまでの記録は、2018年の7月に永関博紀さんが樹立した7日間と19時間37分。この夏、その記録を一気に1日以上更新する猛者が現れた。九州最南端の鹿児島県佐多岬から北海道最北端の宗谷岬まで6日間と13時間28分で走破したのが、自転車ロードレース界で「最強のホビーレーサー」と言われる高岡亮寛さん(42歳)だ。
もともと高岡さんは世界選手権のU-23日本代表に選ばれるなど、トップレベルで活躍する選手だったが、大学卒業後はゴールドマン・サックスに就職して競技からは引退していた。
ところが、運動不足解消のために再び自転車に乗り始めると、レースへの情熱が再燃。2006年に働きながらアマチュアとして競技に復帰し、市民レースの頂点である「ツール・ド・おきなわ」で3連覇を含む6回の優勝をあげるという前人未踏の記録を打ち立てている。
レーサーである彼が、なぜ日本縦断を思い立ち、どのようにして記録を破ったのか? 北海道から戻った直後の高岡さんにインタビューした。
レースがない今だからできること
──ゴールしてからまだ3日。体には相当なダメージが残っているんじゃないですか?
どこかが痛いとか、体調がおかしいとかはないんですけど、とにかく眠いですね。ずっと睡眠不足が続いていたんで、体が休養を求めているという感じです。いちおう普通に生活はできていますけど、目に見えないダメージはあると思うので、練習再開はもう少し先にしようと思っています。
──そもそも日本縦断記録に挑戦してみようと思ったきっかけは何だったんですか?
今シーズンはコロナウイルスの影響で、レースがほぼなくなっているじゃないですか。目標を失ってしまったサイクリストも多いなか、「レースがない今だからこそできることがある」「新しい目標を自分で作って走ればいい」、そんな提案ができたらいいなと考えたんです。
もともとウルトラロングディスタンスには興味があって、自転車で旅をしている人の記事や、アメリカやヨーロッパの大陸横断レースのレポートなどを読んで、おもしろそうだなと思っていたんですよ。それでいろいろ調べているうちに、日本縦断にギネス記録があると分かって、挑戦してみようかな、と。