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自転車で「鹿児島→北海道」を6日半!
ギネスに挑んだ最強ホビーレーサー。 

text by

柳橋閑

柳橋閑Kan Yanagibashi

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photograph byKenichi Yamamoto

posted2020/08/29 19:00

自転車で「鹿児島→北海道」を6日半!ギネスに挑んだ最強ホビーレーサー。<Number Web> photograph by Kenichi Yamamoto

北海道の最北端・宗谷岬に立つ高岡亮寛さん。鹿児島・佐多岬から6日間と13時間28分で走破した。

初日の消費カロリーは約10000!?

──体のトラブルは汗疹以外にも?

 前半は胃腸もやられました。暑いからドリンクもすごく飲むじゃないですか。それで胃液が薄まって消化不良になったのか、食欲が湧かなくて、補給食を思うようにとれなくなったんです。初日と2日目ではスタート時で体重が3kgぐらい減っていました。

 2日目は福岡から岡山まで427kmを走ったんですが、この日がいちばん食欲がなかったですね。でも、走り続けるためにはエネルギーを入れないといけないので、ジェルや、おかゆのような流動食、アイスなどを食べたりして、何とか凌いだ感じです。

──栄養補給はカロリーでいうと、1日どれぐらいとっていたんですか?

 細かいカロリー計算まではせず、そのつど食べたいもの、胃が受け付けるものを食べるという感じでした。ガーミン(サイクルコンピュータ)で計った消費カロリーは、いちばん多かった初日が7836kcal。基礎代謝も加えると約10000kcalぐらいになっていたと思います。

──10000kcal! そのぶん食べようとしたら、それは胃が受け付けなくもなりますよね。そうすると、土地の料理を楽しむような余裕もないですね。

 ひたすら走って、休憩時に補給食をとって、夜ホテルに着いたら、プロテインに炭水化物を加えたサプリメントを飲んで寝るだけ。残念ながら食事を楽しんでいる時間はありませんでした。

 ただ、久々にうまい! と思ったのが、コンビニで食べたカップ焼きそば。たぶん15年以上食べてなかったと思うんですけど、休憩で自転車を降りたとき、ふとカップ焼きそばが食べたいと思ったんです。やみつきになって、後半は4日連続で食べました(笑)。

──じゃあ、後半は胃腸も回復して。

 そうですね。4日目までは何を食べてもおいしいと思えなかったんですけど、後半は雨まじりの天気で、気温もそれほど上がらなくなり、5日目からは食欲も戻りました。

睡眠時間を削って走るキツさ。

──睡眠は1日何時間ぐらいとっていたんですか?

 夜の睡眠は全体的に短かかったです。初日は20時にゴールして、22時すぎに就寝。次の日は朝4時頃スタートだったから、5時間は確保できたのかな。ただ、痒さでそんなに眠れた実感はなかったですね。2日目以降は予定が押してしまって、ゴールが23時をすぎるようになったので、4時間前後の睡眠が続くことになりました。

──それじゃ疲労が抜けませんよね。

 体よりも頭が回復しないんですよ。岡山から福井に向かって走った3日目がいちばんグロッキーでした。市街地で信号や渋滞につかまることも多くて、たとえば時計では2時間20分走っていても、メーターの走行時間は1時間45分しかなかったりする。つまり、35分間も停まっている時間があるんです。

 もともと余裕のないスケジュールなのに、そういう区間が挟まると、夜中まで走らざるをえなくなって、3日目は23時まで走ったにもかかわらず、予定より70km、2時間半のビハインドになりました。そのぶん睡眠時間も削られて3時間ぐらい。

 次の4日目は遅れを取り戻すために、福井県の越前市から新潟県の胎内市まで一気に443kmを走ることになりました。でも、走っていても眠くて、ぜんぜん進まない。心拍数なんて100いってないくらいで、パワー計を見ても100~120W。要するに体的にはかなり楽なペースのはずなんですけど、それすらも維持できなくなるんです。ここまで本格的に動けなくなったのは初めてのことです。

【次ページ】 最終手段は、駐車場で10分間仮眠。

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高岡亮寛

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