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エアグルーヴは強い牝馬の元祖だ。
牡馬に勝てるを証明した札幌記念。 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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photograph byKyodo News

posted2020/08/21 17:30

エアグルーヴは強い牝馬の元祖だ。牡馬に勝てるを証明した札幌記念。<Number Web> photograph by Kyodo News

天皇賞(秋)を制したエアグルーヴ。98年の有馬記念をもって引退後は繁殖入り、ルーラーシップをはじめ数多くの名馬を送り出した。

札幌記念にいた絶好の相手。

「試金石となる1戦でしたね」

 当時、伊藤調教師はそう語っていた。先述した通り前年のオークスを優勝したエアグルーヴだが、その後はぶっつけで挑んだ秋華賞(GI)で10着に敗れた。しかし、古馬初戦となったマーメイドS(GIII)では貫禄の違いを見せつける形で単勝1倍台の圧倒的1番人気に応え、優勝してみせた。

 その後、続く1戦として出走したのが札幌記念だった。2歳時(当時は3歳表記)を除けば、ひたすら牝馬路線を走ってきたため、牡馬相手に走るのは久しぶり。重賞で、となると初めての事だったため、指揮官が「試金石」と語るのも頷けた。伊藤調教師は続けて言った。

「札幌記念に出走した時点で、その後の秋はどの路線に行かせるのかはまだ決まっていませんでした。あくまでも札幌記念の結果次第で決めていこうと、オーナーや(武)豊君と話していました」

 その上で、今後の路線を占う意味で絶好の相手がいた、と語った。

ジェニュインは良いモノサシになる。

「ジェニュインが出ていました。これは良いモノサシになると思いました」

 ジェニュインは前年のマイルチャンピオンシップ(GI)の覇者であり、前々年には皐月賞(GI)を優勝した他、日本ダービー(GI)や天皇賞(秋)でも2着に好走していた。札幌記念の直前に走った安田記念(GI)でも2着と善戦しており、当時のGI戦線でたびたび上位争いをする安定勢力であった。もう1度、伊藤調教師の弁。

「牡馬のトップクラスであるジェニュインにどのくらいついていけるか。何馬身ほどの差でゴール出来るか。『その差次第では秋の天皇賞へ向かわせよう』と話し合って、札幌記念に出走させました」

【次ページ】 牝馬も勝てることを証明した札幌記念。

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