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川崎Fの破壊力を引き上げる、
大島僚太の“無欲”なミドル。
posted2020/08/23 08:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
自分のゴールにまったく無欲な人が大事な試合、大事な局面でゴラッソを決めるのだから否が応でも目立ってしまう。
リーグ再開後、連勝街道まっしぐらで首位を突っ走る川崎フロンターレ。攻めダルマの潤滑剤となっている大島僚太はボランチからポジションを一枚上げたインサイドハーフを担うことで、よりフィニッシュに絡む場面が多くなっている。
1、2位対決となった8月1日のアウェー、G大阪戦。0-0で迎えた後半3分、空いたスペースに出ていってパスを受けた彼は左にいる三笘薫にボールを送り、ペナルティーエリア外で立ち止まる。仕掛けるルーキーに相手が引き寄せられていくためフリーに。渡されたボールをそのまま振り抜くミドルシュートはシュート回転でニアを射抜き、東口順昭は一歩も動けない。丁寧かつ正確、技術水準の高さを見せつける一発で勝利を呼び込んだ。
プロ10年目、ここまで1シーズン3点あげればいいほうだった。それがルヴァン杯鹿島戦を含めて早くも3点目に到達(8日時点)。ミドルシュートを打てるポジションを確保しておいて、しっかりと仕留めるというパターンが続いている。
ミドルの役目は「枠に入れること」?
2年前のこと。自らゴール前に入って得点を奪ったシーンを振り返ってもらったとき「理想ではなかった」と語っていたのが、とても強く印象に残った。彼はこう言葉を続けた。
「確かに点を取れたことはうれしいです。でも僕がやらなくても、きっとこのチームは誰かがその役割をやってくれる。むしろチームのオプションになるのは、ミドルシュートできちんと枠に入れていくとかそういうところだと思うんです」
ポジションを上げたことでゴール前に入っていく意識はこれまでより高まっているに違いないが、基本的なスタンスは変わっていないと見ていい。周りは点が取れる選手ばかり。自分がゴールにがっつく必要はなく周囲のお膳立てをしつつ、ボールを預けられた際のミドルシュートの質を引き上げていく。年に1、2度だったミドルでのゴールが頻繁になってくるとオプションとして確立され、相手に対する威圧感も違ってくる。
無欲から放たれる大島の“極上ミドル”がフロンターレの破壊力をグレードアップさせている。