スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
久保建英を智将エメリ自ら口説く。
ビジャレアル初タイトルへの本気度。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2020/08/20 11:30
“好チーム”から“タイトルを狙えるクラブ”へ。久保建英を手に入れたロッチ会長とビジャレアルは、この1年を勝負とみているようだ。
完全のオスカルより、レンタルの久保。
2列目のポジションならどこでもこなせる22歳は、500~600万ユーロの移籍金でビジャレアルに移籍間近と見られていた。しかし、久保獲得の可能性が浮上したことで選択を迫られたエメリは、最終的に久保を選んだ。クラブには双方を獲得する余裕がなかったからだ。
この選択が意味するところは大きい。
完全移籍、もしくは保有権の50%を買い取って獲得できたオスカルとは違い、久保は1シーズンのレンタルが必須条件。それでいて久保の年俸とレンタル料を合わせた負担額はオスカルの獲得費用と大差なかった。
ならば1シーズンのみでいなくなる久保より、2年目以降も戦力となるオスカルを選ぶ方が得策と考えるのが普通である。実際、一時は有力視されていたセビージャが久保の獲得を断念したのも、2シーズンのレンタル期間や買い取りオプションをレアル・マドリーが拒否したからだという。
それでもエメリとビジャレアルが久保を選んだのは、それだけ彼らが2020-21シーズンに賭けており、久保に即戦力としての期待を寄せているからに他ならない。
コクラン、パレホも獲得で戦力整備。
久保の獲得に続き、クラブはフランシス・コクラン、ダニ・パレホの加入を立て続けに発表。今夏にチームを去った2人の大黒柱、ブルーノ・ソリアーノとサンティ・カソルラの穴埋め補強を早々に実現し、新シーズンに向けて着々と戦力を整えている。
クラブの目標はラ・リーガでの上位進出と並行し、ELとコパデルレイで悲願の初タイトルを獲得すること。そのためには2チーム分ともいえるほどの豊富な戦力をフル活用し、例年以上に厳しい過密日程を乗り越えていく必要がある。
久保のプレーポジションには昨季ラ・リーガで18ゴールを挙げたジェラール・モレノ、快足ドリブラーのサム・チュクウェゼら左利きのアタッカーがいる。厳しい競争が待っていることは間違いないが、週2試合ペースが続くうちは出番には困らないはずだ。