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ミラクル連発!八千代松陰の躍進。
「頑張れ」よりも大切にしたこと。
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2020/08/17 20:00
選手たちの成長を見つめる八千代松陰・兼屋辰吾監督。強豪揃いの千葉大会の中で、堂々のベスト4入りを果たした。
「八千代松陰はただでは転ばない」
兼屋監督は準決勝の木更津総合戦の前も、相手の打球傾向などを選手たちに伝えていたというが、試合中に選手たちから「先生、こうしましょう」と進言があるなど、主体性も顕著だった。実戦不足ながらもセーフティースクイズを決めるなど6安打ながら5点を奪う効率の良い攻撃と13安打を打たれながらも粘り強い守備で好ゲームを展開した。
延長戦では最速150キロに迫るストレートを次々と投げ込んだプロ注目右腕の篠木健太郎にねじ伏せられたが、堂々の戦いぶり。「八千代松陰はただでは転ばない」という印象は、今夏でよりついたことだろう。
息つく間もなく新チームの秋季大会は早くも始まり、八千代松陰は今月26日に地区大会初戦を迎える。兼屋監督は試合後インタビューの終盤、「スタンドから3年生たちの姿を見たプラスと、公式戦を経験できなかったマイナスを補いながら戦っていきたいです」と、いつもの冷静な口ぶりで語った。
決して最後まで諦めなかった、最後まで考えることをやめなかった3年生たちが残した財産は今年も受け継がれた。その継承がなされていく先に、多田野数人(元インディアンス、日本ハム他)を擁して出場した1998年夏以来の甲子園出場もあるのかもしれない。