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ミラクル連発!八千代松陰の躍進。
「頑張れ」よりも大切にしたこと。
posted2020/08/17 20:00
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
奇跡のような快進撃は一瞬で終わりを迎えた。
夏季千葉県高等学校野球大会の準決勝に臨んだ八千代松陰は同点で迎えた延長11回裏、1死満塁から樋熊歓大が投じた初球は相手左打者の膝付近に当たり、無情のゲームセット。2試合連続で3点差をひっくり返す逆転サヨナラ勝ちを決めて勝ち上がってきた同校だったが、木更津総合との一進一退の激戦及ばず、5-6で決勝を前に姿を消した。
それでも兼屋辰吾(かねや・しんご)監督は「インコースを攻めてのデッドボール。インを使いながらの投球ということはずっとやってきたので、あの状況でよく攻めたなと思います」とバッテリーを称えた。
普段はあまり多くを語らないクールな33歳の指揮官は、「1年間、いろんなことがあったので込み上げてくるものがありました。こんな戦いをするチーム、ここまで来るチームになるとは思いませんでした」と、淡々とした口ぶりながらも感情を込めてしみじみ語った。
今年のチームは小粒、秋は初戦敗退。
昨夏はサイドスロー右腕の川和田悠太(仙台大)の好投などでノーシードから勝ち上がり千葉大会準優勝。その実績からすると「奇跡」という言葉はふさわしくないが、レギュラーが多く入れ替わり、新チームの始動が遅れた昨秋は県大会初戦で幕張総合に4-5で敗退。
一昨年は大型右腕の清宮虎多朗(楽天)、昨年は走攻守三拍子揃う遊撃手の長岡秀樹(ヤクルト)とプロに進む選手たちがいたが、今年のチームはどちらかと言えば小粒で、球速が140キロを超えるような絶対的エースもいなければ長打を量産するようなスラッガーもいない。
それでも主将の永戸涼世を中心に、昨夏の先輩たちの成長を肌で感じていた選手たちは冬場に各自がやるべきことをしっかり見つめた。